高気圧が発生する仕組みは大きく分けて二つに分けられます。
一つは温度差に由来するもの、もう一つは強制的な空気の流れ込みによって生じるものです。
今回、日本に影響を及ぼす5種類の高気圧、それぞれの発生プロセスをごく簡単にまとめてみました。
冒頭の模式図(下にもあります)を簡単に説明します(あくまでイメージなので細かいところは気にしないでください)。
長方形は気柱、矢印は空気の移動、黄色い丸は流れ込んで気圧を高くする空気、点線は一定高度を表しています。
1.シベリア高気圧<温度差>
真冬に発生するシベリア高気圧は背の低い高気圧の代表です。
以前に背の低い高気圧と背の高い高気圧について取り上げました。
背の低い高気圧は地上付近の気温の差が原因で生じます。
⇒「高気圧の上空は低気圧?」をご覧ください。
模式図を使って簡単に説明するとこのようになります。
1. 冬のシベリア地方は非常に気温が下がる。
2. 地表付近の空気は冷やされて縮まり体積が減る。
3. そのため縮まった空気より上の高度では、周囲に比べ 上にある空気の量が少なくなる。つまり気圧が低くなる。
4. 気圧が低下したので、周辺から空気が流れ込む。
5. 流れ込んだ空気の分だけ重くなって高気圧となる。
6. 地上で高気圧から周辺に空気が出て行く(風)。
2.チベット高気圧<温度差>
標高4500m ほどのチベット高原は夏の日差しで気温が非常に高くなり、高い高度で高気圧が発生します。チベット高気圧は太平洋高気圧とともに、猛暑の原因の一つになります。
高層の高気圧というと、ちょっとピンと来ないですが、簡潔に説明します。
1. チベット高原の気温が高くなり、空気が膨張し、気柱の背が高くなる。
2. 高い高度で周辺の気柱と比べると、それより上にある空気の量が多くなっている。
つまり上層において高気圧になっている。
ここから分かるようにチベット高気圧は他の高気圧のように周囲から空気が流れ込んで高気圧になるわけではありません。
チベット高原という高い台の上に乗った子供の背が伸びて他の大人を見降ろしている感じでしょうか。
3.移動性高気圧<強制的>
移動性高気圧は偏西風波動に伴う風の収束によって生じます。このあたりの仕組みについては傾圧不安定波に関する一連の記事をご覧ください。
上空で収束した風は下降して図にあるように強制的に空気を送り込みます。
流れ込んだ空気の分だけ気圧が高くなって高気圧が発生します。
4.オホーツク海高気圧<強制的>
梅雨の時期によく見られるオホーツク海高気圧も2つの要因で起きる風の収束が関わっています。
1. 亜熱帯ジェット気流
この時期、亜熱帯ジェット気流はヒマラヤ山脈・チベット高原を挟んで南北に分かれて日本付近を流れます。
それら二手に分かれたジェット気流はオホーツク海の辺りで合流します。高速道路の合流のように風の渋滞が起きて、一部は下降して強制的に空気を送り込み高気圧が発生します。
2. ジェット気流の蛇行
蛇行によって生じる下降気流は移動性高気圧の場合と同じで、やはり強制的に空気を送り込み高気圧が発生します。
5.太平洋高気圧<温度差+強制的>
太平洋高気圧は地球規模の大気の循環(=ハドレー循環)の中で生じます。
温度差によって循環が発生し、循環によって強制的な空気の流れ込みが生じることで維持されています。以下、北半球を前提として説明します。
【始まりは温度差】
1. 赤道付近では日射が強く気温が高くなり、空気が膨張して気柱の背が高くなる。
2. 相対的に気温の低い中緯度とで気柱の背の高さの差が生じる。
3. 上層の一定高度で比べると、中緯度より赤道付近の方が、それより上空の空気の量が多いことになる。つまり、上空で高気圧になる。
4. 気圧差により上層では赤道側から、相対的に低圧な中緯度に向かって風が流れる。
5. 中緯度で空気が下降し、海上で風として周囲に発散する。
6. 南側への空気の流れは赤道付近に達して大気の循環が生じる。
なぜ風が高緯度まで行かずに中緯度で下降するかはコリオリの力が関係しています。
【風の循環で強制的に空気が流れ込む】
1. 赤道付近で空気が熱くなり、上昇気流が生じる。
2. 上昇した空気は対流圏界面に達すると、それ以上 上昇できないので、水平に中緯度に向かって流れる、つまり上空の風となる。
3. 上空の風は中緯度で下降して、強制的に空気が流れ込み高気圧が発生する。
6.まとめ
以上5種類の高気圧の発生の仕組みを考えました。大まかに以下の通りにまとめることができると思います。
◆ 冷たい空気は地上で高気圧
◆ 暖かい空気は上空で高気圧
◆ 強制的に空気が流れ込むと、その下で高気圧
他にもいろんなタイプの高気圧があるでしょう。一つとして同じ高気圧はないでしょうね。