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偏西風、低気圧に寄り道(傾圧不安定波1)

偏西風と温帯低気圧

傾圧不安定波と温帯低気圧はセットになっているので、まずはその二つの構造を視覚でがっちりつかめるようイメージ図を作りました。

傾圧不安定波が何なのかは またまた先延ばしになりますが・・

偏西風波動、偏西風の蛇行、傾圧不安定波、いろいろ呼び方はありますが、ほぼ同じものとして扱っていきます。2,000km ~ 8,000km の波長を持つ偏西風の波動と考えてください。特に波長 5,000km くらいが温帯低気圧の発生、発達に深く関わっています。

図を見て分かると思いますが、偏西風や低気圧・高気圧には幾つか対となる要素があります。それを以下の表にまとめました。

項 目 図の左側 図の右側
偏西風の突出 北側 南側
上空気圧配置 気圧の尾根 気圧の谷
風の水平方向変化 収 束 発 散
気 温 寒 気 暖 気
風の鉛直方向変化 下降気流 上昇気流
地上気圧配置 高気圧 低気圧

この表とイメージ図をもとに少しずつ説明します。それぞれの現象が起きる詳しい仕組みは後日改めて取り上げます。

1.偏西風の蛇行

 1-1  地球規模で考えると、中緯度偏西風帯において偏西風及び寒帯前線は南側の暖かい空気と北側の冷たい空気を分ける”壁”となっています(北半球の場合)。

 1-2 平均的に言って暖かい空気の方が層厚が厚くなり上空の気圧は高くなるので、偏西風は南側の高圧帯と北側の低圧帯を分けるものともなっています。

 1-3 南北の気温差及び気圧差が大きくなると偏西風は南北に蛇行しはじめます。

偏西風と温帯低気圧

2.偏西風 ~ 移動性高気圧

 2-1 偏西風が北側に張り出したところでは周囲より気圧が高く「気圧の尾根」となり(図では上空のHで表しました)、南側に張り出したところでは周囲より気圧が低く「気圧の谷」(上空のL)となっています。

 2-2 気圧の尾根から谷に向かって偏西風が吹くところでは風向・風速の急速な変化によって風の収束が生じます。

 2-3 収束によって風の一部は行き場を失って下降気流となります。

 2-4 冷たい空気は重いので偏西風の北側にある寒気は下降気流に乗っかって偏西風の下を潜り込みながら南下します。

 2-5 下降する寒気は下層の移動性高気圧を作り(地上のHで表しています)、地上付近で周囲に吹き出します。

地上の高気圧は対応する上空の気圧の尾根より東側にずれています(細い点線で結んでいます)。

3.温帯低気圧

 3-1 南下した寒気はもともとあった南側の暖気とぶつかって前線を作ります。

 3-2 前線上に低気圧が発生・発達します。またはもともとある低気圧と前線が結び合わされます。

高気圧の場合と同様、地上の低気圧は上空の気圧の谷より東側にずれています(細い点線で結んでいます)。

 3-3 低気圧に吹き込む寒気は低気圧の西側で暖気を押し下げて寒冷前線(図の青い線)を作ります。

 3-4 逆に低気圧の南側にある暖気は温暖前線(赤い線)を境に北側の寒気の上をはい上がり上昇気流となります。

4.温帯低気圧 ~ 偏西風

 4-1 偏西風は気圧の谷から尾根に向かう過程で風向・風速の急速な変化によって風が発散します。

 4-2 上昇した暖気は発散により不足した風を補うように偏西風に取り込まれていきます。

以上の流れをまとめると、風の流れは 偏西風 ⇒ 低気圧 ⇒ 偏西風 とつながっていきます。

このように偏西風と温帯低気圧は深く関わっています。ただ、上記の流れは番号通りの順番で生じるというよりは、それぞれの現象が複雑に絡み合いながら生じると理解できます。

今回はごく簡単に偏西風(傾圧不安定波)と温帯低気圧の構造を紹介しました。続きはまた・・