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熱力学の法則・方程式の相関図(熱力学まとめ)

熱力学は気象予報士試験の中で特に重要かつ難解な分野だと思います(特に文系人間にとって)。

一つの問題文に幾つもの法則や方程式が絡んでくると脳が乱気流状態になります。

そこで今回、熱力学一族の相関図を作ってみました。

相関図は2つ作りました。1つは式を入れない名称だけ、もう1つは式も記入してあります。一つ一つの詳しい内容は該当するブログ記事をご覧ください。

まずは式を入れない場合・・冒頭のイメージ図をご覧ください。

1.相関図<名称だけ>

1-1. 大気(右上)

気象学における熱力学は大気が主役です。ここから始まります。

 

1-2. 気圧

気圧は大気の圧力です。気圧のイメージは大きく2つに分けられます。

◆ 気柱のイメージ

この場合、気圧の高低は空気の重さによります。

地上に比べて高い山で気圧が低いのは、その上にある気柱が短く空気の質量が小さいからです。

気柱のイメージは静力学平衡や大気の力学と運動を考える上で必要です。

◆ 空気塊のイメージ

この場合は大気や空気塊の体積、質量(空気分子の数)、温度(空気分子のスピード)が互いに関連しあって気圧が決まります。

 

1-3. 気圧傾度力(右側中央)

気圧傾度があるとき、気圧の高い方から低い方へ気圧傾度力が働きます。

水平方向の気圧傾度力の代表は高気圧から低気圧に向かって働くもので風を生じさせます。こちらは大気の力学と運動の分野で学びます。

熱力学では鉛直方向の気圧傾度力を考えます。

先ほどの気柱で考えると下層ほど気圧が高く上層に向かって気圧は低くなっていきます。ですから、気圧傾度力は下から上に働きます。

1-4. 重力(右下)

空気にも質量があるので重力が働きます。

 

1-5. 静力学平衡(静水圧平衡)

気柱の中の、ある高度に直方体の空気塊があるとすると、その空気塊には下から上に働く気圧傾度力と上から下に働く重力の両方が働きます。

それら2つの力がつり合って平衡状態にあるときを静力学平衡(静水圧平衡)といいます。

 

1-6. 気体の状態方程式(中央)

気圧、体積、質量、温度の関係を表すのが気体の状態方程式です。

体積と質量の代わりに密度を用いることもできます。

 

1-7. 層厚の式

気体の状態方程式と静力学平衡の式を結びつけると層厚の式が導き出されます。

さらに層厚の式を応用すると海面更正(海面補正)の式測高公式が導き出されます。

 

1-8. 熱力学の第一法則(図の上方)

空気に熱を加えると熱は内部エネルギーの増加と仕事(空気の膨張)に使われます。

内部エネルギーの増加と気温の上昇を結びつけるのが比熱です。

比熱を用いて熱力学の第一法則と気体の状態方程式を結びつけることができます。

 

1-9. 断熱変化(図の左)

熱力学の第一法則において熱を加えないケースが断熱変化です。

 

1-10. エマグラム、温位、大気の安定度

実際の気象現象の多くは空気塊の断熱膨張、断熱圧縮など断熱変化に基づいています。それらを利用して大気の安定度を知ることもできます。

エマグラムは大気の安定度を知るためによく用いられます。

以上が熱力学分野の大まかな関連図です。ここからはそれぞれに数式を当てはめていきます。

2.相関図<式を記入>(下の図)

2-1. 気圧 

単位は Pa または hPa

記号は P または p

 

2-2. 気圧傾度力

式は次の通りです。(nは距離)

$$P_n=−\frac{1}{ρ}\frac{ΔP}{Δn}$$

鉛直方向で気圧傾度力を考える場合、上記の式を次のように変換できると思います。(zは高さ)

$$P_z=−\frac{1}{ρ}\frac{ΔP}{Δz}$$

※ PZ という表し方が通常あるのか分かりませんが、理解しやすいようにこう書きました。

2-3. 重力

重力は質量(m) × 重力加速度(g)なので

重力=mg で表せます。

さらに、質量は密度(ρ) × 体積(V) です。

気柱のイメージで考えると空気の塊は直方体になり、直方体の底面を単位面積とすると体積は直方体の高さで表せます。すると上記の式はこのようにも表せます。

$$重力=\mathit{ρgΔz}$$

2-4. 静力学平衡(静水圧平衡)

静力学平衡は気圧傾度力と重力がつり合った状態といえます。この状態を式で表すとこうなります。

$$\mathit{ΔP=−ρgΔz}$$

2-5. 気体の状態方程式

$$\mathit{PV=mRT}$$

密度を使うと

$$\mathit{P=ρRT}$$

2-6. 層厚の式

$$\mathit{Δz=−\frac{RT_m}{g}×\frac{ΔP}{P_m}}$$

2-7. 熱力学の第一法則

$$\mathit{ΔQ=ΔU+ΔW}$$

定積比熱(定容比熱)と比容α を使うと

$$\mathit{ΔQ=C_vΔT+PΔα}$$

2-8. 断熱変化

熱力学の第一法則の式で ΔQ=0 の場合です。

以上が熱力学で学ぶ法則や式の大まかな相関図になります。これで、どんな問題が出ても怖くない。。てなことは全然ないですね。熱力学は奥が深い...