相当温位のキホン

温位は乾燥断熱変化させて数値を求めます。でも実際の大気は水蒸気を含むため、上昇すると ある段階で水蒸気が凝結します。ここで相当温位が登場します。では相当温位とは何でしょうか?

1.相当温位とは

◆ 『相当温位は温位に加え、含んでいるすべての水蒸気が凝結して潜熱の放出によって加熱するという効果をもった物理量です。』(「かんたん合格テキスト 学科一般知識編」より)

つまり、相当温位・・温位+(潜熱→昇温効果)です。

別の説明では、

◆ 『相当温位は空気塊が含む水蒸気のすべてが凝結をして、放出した潜熱(凝結熱)が空気塊を加熱して昇温する効果と、基準気圧1000hPa まで断熱変化させたときに起きる断熱昇温の効果の2つを考えた温度です。』(「かんたん合格テキスト 学科一般知識編」より)

つまり、相当温位・・昇温効果(潜熱+断熱変化)ともいえます。

2.相当温位の求め方

2-1. カギは3段階の断熱線

相当温位を求める方法について、テキストの説明を借りると

◆ 『空気塊を乾燥断熱的に持ち上げ、飽和したら湿潤断熱線に沿って水蒸気がすべて凝結・落下するまで持ち上げて、基準気圧1000hPa まで乾燥断熱的に降ろしたときの温度を相当温位といいます。』(「かんたん合格テキスト 学科一般知識編」より)

まとめると3つの断熱変化の段階があるということです。

❶ 乾燥断熱線に沿って上昇

❷ 湿潤断熱線に沿って上昇

❸ 乾燥断熱線に沿って下降

2-2. エマグラムで理解

相当温位について温位と比較しながらエマグラムのイメージ図(冒頭または下)で説明します。エマグラムについては別の記事で取り上げる予定です。

図の右上に円(空気塊)の説明があります。

色は温度を表しています。暖色が強いほど温度が高く、寒色が強いほど温度は低くなっています。イメージなので厳密に考える必要はありません。

それぞれの円にアルファベットが振ってありますが、同じ空気塊を位置で分けて表しています。青い雨マークは水蒸気です。

2-3. 当初の位置(B)

空気塊はBの位置(高度P)にあります。空気塊の温度はピンクです。

最初の時点では温位も相当温位も分かっていません(中の色は無視してください)。

2-4. 温位(B→A)

空気塊をBの位置から1000hPa まで乾燥断熱線に沿って高度を下げます。

すると、空気塊の温度は断熱昇温してオレンジになります。これが温位です。温位を示す円の左半分がオレンジになります。

2-5. 飽和するまで高度を上げる(B→C)

空気塊を上昇させます。最初のうちは水蒸気があっても飽和していないので、乾燥断熱線に沿った上昇となり、温度が下がっても温位は保たれています。

2-6. 飽和に達する(C)

図ではCの時点の高度で空気塊は飽和します。このときの高度を持ち上げ凝結高度といいます。ここから凝結が始まるので雲底高度ともいいます。

また、持ち上げ凝結高度は乾燥断熱線と等飽和混合比線との交点にある高度です。詳しくはエマグラムについての記事で扱う予定です。

2-7. 湿潤断熱線に沿って上昇(C→D)

飽和してからの上昇では水蒸気が凝結していきます。凝結すると潜熱(凝結熱)を放出します。

以前の記事で扱ったように、潜熱による加熱があると乾燥断熱変化に比べて温度の低下の割合(気温減率)は小さくなります。

空気塊はCの位置からは雲を作りながら湿潤断熱線に沿って上昇していきます。

潜熱の放出が続くので上昇とともに温位は上がり続けます。

2-8. 水蒸気がすべて凝結(D→E)

水蒸気すべてが凝結した位置をDとします。

ここから1000hPa まで乾燥断熱線に沿って一気に高度を下げていきます。

2-9. 相当温位(E)

空気塊が1000hPa (図ではEの位置)まで移動すると温度は赤になります。

相当温位の定義にあるように、この時の温度がこの空気塊の相当温位になります。

全ての円の右半分が赤いように、空気塊がどの高度にあっても相当温位は一定です。

温位についてはDの位置では相当温位と同じ色(数値)ですが、他の位置では相当温位と異なる色(数値)を示しています。

3.相当温位の計算

地上にある水蒸気を含む空気塊Aが以下の条件のときの温位と相当温位を計算します。

高度 :0m

気圧:1000hPa

気温:17℃

潜熱:15K

● 温位:17+273=290K

● 相当温位:290K+15K=305K

4.温位と相当温位の関係

温位と相当温位の間には近似的に次の関係が成り立ちます。

θ= θ + 2.8ω

θ:温位

θe:相当温位

ω:混合比 単位:g/kg

※ 混合比(水蒸気混合比)とは、湿潤空気に含まれる水蒸気質量と乾燥空気質量の比のことです。

例えば、空気塊の温位が300K で大気中の水蒸気量を表す混合比が10g/kg とすると、相当温位は 300K+2.8×10g/kg = 328K となります。

ですから、水蒸気が0なら混合比も0になり、相当温位=温位となります。

一方、水蒸気があるなら、相当温位は必ず温位より高くなり、水蒸気が多いほど温位との差は大きくなります。

5.相当温位の保存性

エマグラムのイメージ図でいうと、一旦 相当温位が赤と定まると、空気塊がどの位置にあっても相当温位は赤ということになります。

A~Cでは温位は低いですが放出可能な潜熱の素となる水蒸気が含まれています。一方、Dでは温位は高いですが、水蒸気は全くありません。

相当温位=温位+潜熱 という考え方に当てはめると

Bの位置:相当温位=温位(低)+潜熱(有)

Dの位置:相当温位=温位(高)+潜熱(無)

となり、両者は同じ値を示します。

相当温位は潜熱の効果を最大限に取り入れたときの温位なので、乾燥断熱変化でも湿潤断熱変化でも一定です。つまり保存されます。

一方、温位は乾燥断熱変化のときだけ保存されます。

6.相当温位と気温・水蒸気量

相当温位は空気の温度と水蒸気の量で決まります。

ですから、相当温位は空気塊の気温が高いほど、また水蒸気が多いほど高くなります。特に水蒸気の増減が相当温位の値を大きく変化させます。

気温と相当温位の関係は気温と温位の関係と同様です。

水蒸気の影響については、乾燥断熱線と湿潤断熱線の傾きの違いを見れば分かります。

水蒸気が多ければ すべてが凝結するまでより長く高く上昇するため、凝結しない空気塊との温度差が大きくなるからです。

このように相当温位と気温・水蒸気の関係を知ると次のことが分かってきます。

相当温位が高い ⇒ 高温多湿

相当温位が低い ⇒ 低温乾燥

相当温位を利用して大気の安定度や大雨の降る指標を知ることができます。相当温位の利用法については別の記事で扱います 😀