大気の気温減率と安定度

天気予報で「大気の状態が不安定で雷雨が起きる」というのは、よく耳にします。

では、大気の安定・不安定って何でしょうか?気温減率がカギとなります。

1.安定と不安定

地上の人間にとって分かり易く捉えるなら、次の3つのパターンで説明できます。

地表の暖められた空気(空気塊)が ある高さまで上昇した時、

安定・・上昇して下りて来る

中立・・上昇して その場に留まる

不安定・・上昇して さらに上昇する

水蒸気を含む空気塊が、3番目の上昇し続ける状態になると積乱雲が発生することがあります。

空気塊が下降する設定でも同様に3パターンに分けられますが、ここでは上昇に限って考えます。

さらに正確に定義するなら以下の通りになります。

空気塊を鉛直方向に移動(上昇・下降)させたとき、

安  定・・元の高度に戻る

中  立・・その場に静止する

不安定・・さらに運動を継続する

2.上空の大気の温度と安定・不安定の関係

空気塊が上昇し続けるかどうかは空気塊の温度と上空の大気の気温の比較によって決まります。次の図をご覧ください。

地表付近の暖かい空気塊(赤い丸)が上昇すると断熱膨張によって温度が低下します(青い丸)。

その空気塊の周囲の大気を先ほどの3パターンに分けて考えます。左から説明します。

A 上昇した空気塊より周囲の大気が暖かい場合(ピンク)、空気塊は周囲より密度が高く重いので下降していきます。これが安定した大気です。

B 上昇した空気塊と周囲の大気が同じ温度の場合(水色)、空気塊は周囲の大気と同じ密度なのでその場に留まります

C 上昇した空気塊より周囲の大気が冷たい場合(紺色)、相対的に空気塊の方が暖かく密度が低く軽いので、さらに上昇していきます。これが不安定な大気です。

以上が基本中の基本です。

3.飽和と未飽和の空気

今度は上昇する空気塊の状態を次の2種類に分けて考えます。

● 飽和した空気・・空気に水蒸気が限界まで含まれている(湿度100%)

● 未飽和の空気・・飽和していない空気

4.潜熱の放出

空気塊が上昇すると断熱膨張によって空気塊の温度は低下します。

でも、温度が下がっていく割合(減率)は、飽和した空気と未飽和の空気とでは違いがあります。

飽和した空気は、温度が下がるに連れて含んでいる水蒸気が凝結していきます。

凝結に伴い潜熱(凝結熱)が放出されるため、その分 加熱され温度の低下の割合が小さくなります。

5.乾燥断熱減率と湿潤断熱減率

下の「空気塊の気温減率」の図をご覧ください。

5-1. 乾燥断熱減率(図の中央)

未飽和の空気塊は100m 上昇すると温度が約1℃(0.98℃) 低下します。

この気温減率を乾燥断熱減率 Γd といいます。

Γ は「ガンマ」と発音します。鍵括弧と紛らわしいですね。

5-2. 湿潤断熱減率(図の右側)

飽和した空気塊は、潜熱の放出により温度の低下が緩やかになります。

このように潜熱の加熱効果を考慮した気温減率湿潤断熱減率 Γm といいます。

図では、100m 上昇すると約0.5℃の低下としています。

湿潤断熱減率の場合、気温や圧力で数値が変わりますが、一般には0.5℃/100m が使用されます。

5-3. 大気の気温減率(図の左側)

大気の気温減率というのは実際の地上の気温と上空の気温を観測して割り出すものなので、定まった数値はありません。

大気の気温減率は Γ で表します。

ただ、平均的な気温減率が 0.65℃/100m なので この数値を代表として挙げました。

6.3種類の安定度

下の「3つの安定・不安定」の図をご覧ください。このイメージ図は、これまで挙げた2つの図を合成したものです。大気の状態を3種類の安定・不安定に分けています。

6-1. 絶対安定(左)

上空の大気の気温が高い場合を考えます。

未飽和の空気塊は上昇した時、周囲の大気より冷たいので下降します。

飽和した空気塊の場合、未飽和の空気塊に比べると温度の低下は緩やかですが、それでも周囲の大気よりは温度が低いです。従って下降します。

このように上昇する空気が飽和・未飽和にかかわらず下降する場合の成層状態を「絶対安定」といいます。

6-2. 絶対不安定(右)

上空の大気の気温が低い場合を考えます。

未飽和の空気塊は上昇して温度が低下しますが、上空の大気はそれ以上に温度が低いので空気塊はさらに上昇していきます。

飽和した空気塊も当然周囲の大気より暖かく、さらに上昇し続けます。

このように上昇する空気が飽和・未飽和にかかわらず、さらに上昇する場合の成層状態を「絶対不安定」といいます。

6-3. 条件付不安定(中央)

上空の大気の気温が極端でない場合を考えます。

未飽和の空気塊は上昇して温度が下がり、周囲の大気より冷たくなります。ですから下降していきます(安定)。

一方、飽和した空気塊は未飽和の空気に比べると温度の低下が緩やかで、周囲の大気より暖かくなっています。ですから、さらに上昇していきます(不安定)。

このように空気塊が飽和しているという条件の下で不安定となる成層状態を「条件付不安定」といいます。

7.湿潤断熱線と乾燥断熱線

これら3つの安定・不安定を次のグラフで説明します。横軸が気温、縦軸が高度です。

7-1. 湿潤断熱線(水色の実線)

これは飽和した空気が高度と共にどれだけ温度が下がって行くかを表した線です。

言い換えれば湿潤断熱減率に沿って引かれた線といえます。

このグラフのケースでは地上の気温が30℃ ですから 0.5℃/100m の気温減率により上空1000m の気温は25℃ になります。

7-2. 乾燥断熱線(オレンジの実線)

湿潤断熱線と同じ考え方により、乾燥断熱減率に沿って引かれた線です。

このケースでは 1℃/100m の気温減率により上空1000m の気温は20℃になります。

7-3. 状態曲線(点線)

これは観測大気の気温減率を示しています。つまり実際の大気の温度傾度を示した線です。曲線といいますが、このグラフでは分かり易いように単純化して直線で描いています。詳しくはエマグラムのところで出て来ます。

8.状態曲線から安定度を見る

下のグラフから説明します。

8-1.  絶対安定(赤の点線

地上の気温が30℃、上空1000m の気温が27℃とすると、地上から上昇して来た空気塊は飽和・未飽和にかかわらず周囲の大気より温度が低いので、また下降していきます。

このケースの大気の気温減率は0.3℃/100m で湿潤断熱減率より小さいです。

絶対安定では状態曲線が湿潤断熱線より立っていることが分かります。

8-2.  条件付不安定(紫の点線

上空1000mの気温が23℃とすると、未飽和の空気塊は乾燥断熱減率により上空では20℃になり、周囲の大気より温度が低いので下降し、この場合安定した大気となります。

飽和した空気塊は湿潤断熱減率により上空では25℃になり、周囲の大気より温度が高いのでさらに上昇していき、この場合不安定な大気となります。

このケースの大気の気温減率は0.7℃/100m で、湿潤断熱減率より大きく乾燥断熱減率より小さいです。

条件付不安定では状態曲線が乾燥断熱線と湿潤断熱線の間に位置します。

8-3. 絶対不安定(青い点線

上空1000m の気温が15℃とすると、地上から上昇して来た空気塊が飽和・未飽和にかかわらず周囲の大気より温度が高いので、さらに上昇することになります。絶対的に不安定な大気ということですね。

このケースの大気の気温減率は1.5℃/100m で、乾燥断熱減率より大きいです。

絶対不安定では状態曲線が湿潤断熱線より寝ていることが分かります。

9.まとめ

まとめとして次のグラフを見てください。

9-1. 気温減率

湿潤断熱減率m

  0.5℃/100m

大気の気温減率(Γ)

 平均は0.65℃/100m

乾燥断熱減率(Γd)

  1℃/100m

9-2. 大気の安定度

 絶対安定

        Γm > Γ

 条件付不安定

   Γd > Γ > Γm

 絶対不安定

 Γ > Γd

対流圏の大気の多くは条件付不安定に該当し、積乱雲もほとんどがこの成層状態で発生します。

また多くの場合は、空気塊が水蒸気を含んでいても最初は乾燥断熱減率に沿って上昇し、飽和に達したあと湿潤断熱減率に沿って上昇します。そのことは後の記事で扱います。

ここまでで考慮したことを土台にして、次の温位なるものに取り掛かります。

ちょっと疲れましたね 😐  私だけ❓