千葉豪雨 亜熱帯低気圧と台風21号が原因 

下は熱帯、上は温帯?この変わり種の低気圧が千葉県民をまた悩ませました。

この秋(2019年)の千葉県民は3つの台風と1つの変種の低気圧による記録的な暴風と大雨で大変な目に遭ってしまいました。

1.3つの台風と1つの低気圧が千葉を襲う

台風15号・・ 9月5日、千葉市に上陸。千葉市で最大瞬間風速57.5m/s を記録。千葉県内では屋根が飛ばされたり、長期間停電が続いたりしました。

台風19号・・ 10月12日、伊豆半島に上陸。千葉県では他の地域ほどの激しい風雨はなかったものの、市川市で竜巻が発生し被害がでました。

台風21号・・ 10月25日、房総半島の南東海上を通過。随分離れて通りましたが影響があったのでしょうか?

21号本体の雨雲は本州にはかかりませんでしたが、次の低気圧とセットになって千葉県各地に記録的な大雨をもたらしました。それは・・

亜熱帯低気圧・・ あねったい??  何者?

ということで、今回 取り上げるのは亜熱帯低気圧と台風21号による2019年10月25日の千葉県豪雨の仕組みです。

2.当時の気圧配置

亜熱帯低気圧が何者なのかは後回しにして、まずは今回(2019年10月25日)千葉県から福島県にかけて大きな被害をもたらした大雨の仕組みを振り返ってみます。当日の天気図を見てください。

千葉県から見た気圧配置として、北東に移動性高気圧、南東海上に台風21号、南西海上のすぐ近くに低気圧があります。

この気圧配置によって次のイメージ図にあるような風のぶつかり合いが生じます。

3.千葉豪雨の仕組み

大雨の要因は風のぶつかり合いにあります。

◆ 亜熱帯低気圧周辺の暖かく湿った空気が反時計回りに関東南部に入って来ます。

◆ 高気圧周辺では時計回りの風が吹いています。

◆ 台風21号周辺では反時計回りの風が吹いていて、高気圧からの風によって勢いを増しながら、暖かく湿った空気を東の海から関東地方に送り込みます。

◆ 内陸からは冷たい風が吹きこんで来ます。

4.テーパリングクラウド

以上4つの風がちょうど千葉県の房総半島あたりに集まって収束・上昇し線状降水帯を作りだしました。

こうして千葉県各地で記録的な大雨となり、幾つかの地点では6時間で1か月の降水量を上回る雨が降る異常事態になってしまいました。

線状降水帯の一種にテーパリングクラウドというものがあります。人参のような形をしていて、とりわけ危険な部類の線状降水帯です。

線状降水帯やテーパリングクラウドについては別の記事で考えますが、どんなものか当時の衛星画像を見てください。

矢印の先に人参を立てたような逆三角形の雲が見えます。ちょっと見えづらいですが、ちょうど房総半島を覆うような位置にあります。

この人参の先っぽのところで発達した積乱雲が作られ北上して行きますが、同じ場所で新たな積乱雲が次々と発生するので、同じような場所で激しい雨が降り続きます。

千葉を覆っていた線状降水帯は低気圧の移動と共に東北南部に移動し、福島でも大きな被害をもたらしました。

5.亜熱帯低気圧とは・・・

では、今回の大雨の要因の一つとなった亜熱帯低気圧とはどんなものでしょうか?

まずは、大御所、気象庁の用語名説明を引用します。

『亜熱帯低気圧  下層では熱帯低気圧に類似した性質を持つが、上層で寒気を伴う点で、熱帯低気圧と温帯低気圧の両方の性質を持つ低気圧。上層まで中心付近に暖気を伴う熱帯低気圧よりも広い範囲で強風が吹く特徴がある。』 

だそうです。

ただし気象庁では、この名称は専門家向けとし天気予報や解説では用いないことになっています。そのせいか、気象予報士の皆さんも今のところ、今回の低気圧を亜熱帯低気圧と断定するのは避けているように思えます。

6.ハイブリッド低気圧

亜熱帯低気圧を一言で表現すれば、【熱帯低気圧と温帯低気圧の中間的な性質を持つ低気圧】で、「ハイブリッド低気圧」と呼ぶ人もいます。

同様のハイブリッド的な性質を持つ低気圧は世界の他の海域でも時々発生します。

その中で地中海で発生する低気圧は「メディケーン」と呼ばれています。

奇しくも千葉豪雨の翌日に一つのメディケーンがエジプト・シナイ半島に上陸しました。中東に上陸するのは異例中の異例だそうです。砂漠で暴風雨。。。 確かに異例です。

7.亜熱帯低気圧の特徴

亜熱帯低気圧がどんな性質を持つものなのかについては地域や機関によって様々、というかバラバラです。それで、今回 日本にやって来たタイプのもので考えると、大まかに言えば以下の性質・特徴が挙げられます。(参考にWMO(世界気象機関)の定義を記事の最後に載せておきます。)

1) 発生域・・ 主に亜熱帯域の海面水温23℃以上の海域

2) 下層~中層

 ● 熱帯低気圧と同じ性質を持つ(暖気に包まれている)

 ● 暖気核(ウォームコア)があり、強い対流が起こっている

3) 上層・・ 温帯低気圧と同じ性質を持つ(寒気を伴っている)

4) 基本的には熱帯低気圧のように暴風を伴い、湿った空気と大雨をもたらす

5) 雲の塊は中心の北側または東側に偏って存在する

6) 暴風の最も強い部分は中心から約500kmほど離れた辺縁部にある

7) 上層の寒冷渦トラフの近くで発生する

個々の亜熱帯低気圧に上の全ての性質が当てはまるという訳ではないでしょう。

いずれにせよ、今回 千葉県や福島県で起きた豪雨の要因には亜熱帯低気圧と台風21号からの大変湿った気流があることが分かります。また、その遠因には海の温度の上昇、さらには地球温暖化があるのでしょう。

 WMO(世界気象機関)による亜熱帯低気圧の説明

『亜熱帯域に発生する純粋に温帯的でも熱帯的でもない低気圧についてその成因や名称は単純ではない。WMO ではこのような低気圧に亜熱帯低気圧という名称を与え、その定義を次の二項目としている。
1)小さな暖気核を持ち、前線上の波動としてあるいは上層寒冷谷の東に発生する。
2)小さな暖気核を持ち、寒冷低気圧の中で発生する。』

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