コリオリ力を感覚的に理解しようー視点編(コリオリ力1)

『「高気圧の風は時計回り、低気圧は反時計回り 」って言うけど、なんで?」

コリオリの力(回転力)を知っていればうまく答えられるはずですが。。。

でもコリオリ力(こりおりりょく)って何なのか?テキストを読んでも分かったような分からないような...

ということで、一連の記事でコリオリ力を専門用語や数式を使わずに感覚的に理解できるように まとめてみました。 

数式を使ってコリオリ力を求める方法については「コリオリの求め方(コリオリ力4)」をご覧ください。

1.高気圧・低気圧に働くコリオリ力

本題に入る前に、冒頭の質問をイメージ図を使ってもう少し詳しく考えます。

1-1. 右カーブする風・・高気圧の場合

風は気圧傾度力によって気圧の高いところから低いところへと吹きます。

図のように高気圧がある場合、風は高気圧の中心から四方に直線的に吹き出すはずです。

ところが、真っすぐ進むはずの空気が右へ右へと向きが変わっていきます。

結果的に高気圧の周りでは風は時計回りに周囲に広がって行きます。

1-2. 右カーブする風・・低気圧の場合

低気圧についてはどうでしょう。風は低気圧の中心に向かって四方から真っすぐ集まって来るはずです。

ところが、真っすぐ進むはずの空気が右へ右へと向きが変わっていきます。

結果的に低気圧の周りでは風は反時計回りに中心へと集まって行きます。

1-3. 右カーブなのに反時計回り?

低気圧の風は反時計回りだから右カーブじゃなくて左カーブでしょ。左方向に曲げられているんじゃないの? という素朴な疑問もあるかもしれません。

この場合の左カーブとは、傾度風の向きのことで遠心力が関係してくるものです。

遠心力傾度風については今後、取り上げていきます。

2.コリオリ力の定義

ここまでで 風とコリオリ力の関係をまとめると

『気圧傾度力によって直線的に進むはずの風に「何かの」力が働いて向きが右方向に無理やり曲げさせられてしまう、この「何かの力」をコリオリ力(こりおりりょく)という』

と説明できます。なお、南半球では左方向に曲げられます。

注:赤の矢印はコリオリの力のイメージで、力の強さと方向を示すベクトルではありません。

さらに包括的な定義については以下が分かり易い説明でしょう。

『自転する地球では、運動する物体に対して進行方向を曲げる力が直角に働いている。これをコリオリの力(転向力)という。』(「プロが教える気象・天気図のすべてがわかる本」ナツメ社 岩谷忠幸監修)

ですから、コリオリ力は大気だけでなく、あらゆる物体に働くことがあるということです。

3.コリオリ力を理解する2つのカギ

いよいよ本題に入ります。細かい考察は後にして私が考えた2つの要素を紹介します。

コリオリ力を理解するカギは【視点の違い】【回転】です。

A 視点の違い(地上と上空) ⇒ 見かけの動き

B 回転(自転) ⇒ 見かけの動きがカーブ

A+B ⇒ コリオリ力(見かけの力)

この記事では A 視点の違い を説明するために人工衛星と 移動する地上の人間の例えを用います。

次回の記事では B 回転 を説明するために、人工衛星と 回転する円盤上の人間の例えを用います。

4.カギA 視点の違い(動く歩道の例え)

4-1. 天動説

回転については後回しにして、まず視点の違いをイメージします。

大昔の人が考えていたように、地球が球形ではなく平べったく かつ自転していないとしたらコリオリ力は働くでしょうか?働かないですよね。

では、自転しないとしても、動いている地面の上空を物体が移動しているとしたら、地上ではどのように見えるでしょうか?

コリオリ力について理解する前段階として例えを用いて考えます。

4-2. 人工衛星と動く歩道

動く歩道と人工衛星をイメージします。動く歩道は空港やターミナル駅などにありますね。ここで とっても幅の広い 動く歩道を想像してください。

動く歩道の上空を人工衛星が通過します。人工衛星から人の動きを見た時と、人が人工衛星の動きを見た時と、それぞれどう違って見えるでしょうか?

■ 動く歩道が止まっている時 or 動いている時

■ 人工衛星から人を見下ろした時 or 人が人工衛星を見上げた時

上記を組み合わせた4つのパターンを考察します。

4-3. イメージ図の説明

● 黄色い長方形・・ 動く歩道 右方向に動く

● 青い物体・・人工衛星 図の下方向に移動する

● 時刻・・人工衛星が位置する時の時刻

● A~E・・人(Eは人?)

4-4. 動く歩道が停止中

4-4-1. 人工衛星から見た人の動き(上記の図)

この場合、人工衛星は時間と共にAさんから始まってEさんまでを真下に見ます。

4-4-2. 人から見た人工衛星の動き(下記の図)

Aさんから始まってEさんまでの人たちは時刻ごとに自分の真上を人工衛星が通り過ぎるのを見ることができます。

ですから、動く歩道が動いていないなら宇宙からも地上からも見え方に違いはないということですね。

4-5. 動く歩道が運転中

4-5-1. 人工衛星から見た人の動き

動く歩道が動いている場合(動くのは当たり前ですが)、人工衛星が動く歩道上の人間を見たらどうでしょう?

人工衛星は、動く歩道が動いていようと止まっていようと、自分はこれまで通り真っすぐ進んでいると思っています。実際その通りです。

一方、人間が右方向に移動していくのが見えます。

人工衛星からは人間が自分の左方向に移動していくように見えます。でも分かり易いように図上の方向で説明します。

 0:00 には真下にAさんが見えます。

 1:00 になるとBさんは真下ではなく右方向にずれて見えます。

以降、時間を追うごとに人は右方向に離れて行くように見えます

4-5-2. 人から見た人工衛星の動き

動く歩道に乗っている人たちは自分たちは止まっていると感じています。地球上にいる私たちが止まっていると感じているのと同じです。

でも空を見上げると人工衛星は斜め左方向に飛んでいるのが分かります。

人間からどう見えるかは顔をどちらに向けているかで変わってきます。ここでは分かり易いように 図上の方向で説明します。

 0:00 にはAさんは真上に人工衛星を見つけることができます。

 1:00 になるとBさんは人工衛星を自分より左方向に見ます。

以降、時間を追うごとに人工衛星は斜め左方向に移動しているように見えます。

4-5-3. 見かけ上の位置

このように人工衛星と人間は、それぞれ自分たちは止まっていて相手が動いていると見ています。違った視点で見ているということです。

言い換えると、実際の位置とは別に「見かけ」の位置があるということです。相対的な位置とでもいうのでしょうか。

以上の例えを用いたのは、コリオリ力が見かけの力だからです。

次回は円盤と人工衛星の例えから、コリオリ力が生じる理屈を考えていきます。