発散・収束と渦度には深い関係があります。低気圧を例に取って考えるのが1番分かりやすいと思います。
今回は発散と収束の関係について考察します。その前に、発散・収束・渦度の種類分けをしてみました。
目次
1.発散・収束・渦度の種類
1-1. 水平方向・鉛直方向
次の表を見てください。数字はこれから説明する項目の数字に合わせています。(文字化け防止のため本文では括弧書きにしています)
一つの大きな分類は水平方向(1)か鉛直方向(2)かです。
発散・収束・渦度、いずれについてもイメージしやすいのは水平方向(水平面)だと思います。
渦度の場合、水平方向というのは鉛直成分の渦度のことです。ちょっと紛らわしいですね。鉛直成分があれば水平成分もあるのですが、ここでは深入りしないことにします。
1-2. 風向や風の流れによるもの
発散・収束・渦度いずれの場合も風や気流の流れる方向の違いによって生じるケースの方が分かりやすいでしょう。
(3) 方向発散・・風が周囲に散らばる
例:高気圧の地上付近の風の流れ
(4) 方向収束・・風が周囲から集まって来る
例:台風の地上付近の風の流れ
(5) 風向による渦度・・風の流れがカーブしている
例:偏西風の蛇行によって生じる
1-3. 風速の違いによるもの
風速の違いによっても発散・収束・渦度が生じ得ます。
(6) 速度発散・・前方の風が速く後方が遅い
(7) 速度収束・・前方の風が遅く後方が速い
例:偏西風のトラフの西側
(8) 速度の違いによる渦度・・風向が同じで風速が異なる場合
例:偏西風の強風軸の両側
1-4. 気流の向きの違いによるもの
(9) 方向発散・・ある高度で気流が上昇・下降に分かれる
(10) 方向収束・・上昇気流と下降気流がある高度でぶつかる
1-5. 気流の速度の違いによるもの
(11) 速度発散・・上方の上昇気流が速く下方が遅い、または下方の下降気流が速く上方が遅い
(12) 速度収束・・上方の上昇気流が遅く下方が速い、または下方の下降気流が遅く上方が速い
※ 渦度については省略します。
2.発散と収束の関係
2-1. 発散と収束は対になっている
発散があるところには収束があります。また、収束があるところには発散があります。
この仕組みを低気圧・高気圧・偏西風蛇行を例に取って考えてみます。
下の図を見てください。ごちゃごちゃっとしてますが、右側が低気圧、左側が高気圧とした場合の鉛直断面図です。
2-2. 低気圧の場合
2-2-1. 地表から中層まで
◆ 低気圧の周辺から風が集まってきて収束します(水平方向の方向収束)。
◆ 集まった風は行き場を求めて上か下に行こうとします。下は地面なので上に向かい上昇気流となります。
◆ 地上から上空になるにつれて水平方向から収束する風は弱くなりますが、逆に上昇気流の強さは増していきます。
◆ もともと上昇気流がなかった地上で上昇気流が生じ、高さとともに強まるということは鉛直方向で見れば気流が発散しているということになります(鉛直方向の速度発散)。
2-2-2. 非発散面
◇ 対流圏中層は発散も収束もない「非発散面」で、この高さで上昇気流が最大になっています。
別記事で扱いますが、発散・収束は渦度に影響を及ぼすので、その影響がない500hPa付近で渦度の解析をすることになっています。
2-2-3. 中層から対流圏界面まで
◆ 上昇気流は対流圏界面を突き抜けることができないので、圏界面に近づくにつれ次第に収束していきます(鉛直方向の速度収束)。
◆ 鉛直方向の収束が強まるにつれ水平方向の発散が強まっていきます(水平方向の方向発散)。
2-3. 高気圧の場合
高気圧の場合は基本低気圧と同じ現象が上層(対流圏界面付近)から下層(地表付近)に向けて生じていると考えることができます。詳しい説明は省略しますが、図の左側を見れば分かると思います。
2-4. 偏西風蛇行の場合
今度は偏西風の蛇行によって生じる高気圧・温帯低気圧を考えてみます。下の図をご覧ください。
ここでは詳しいプロセスには触れませんが、偏西風が蛇行すると気圧の尾根(リッジ)で風速が強くなり、気圧の谷(トラフ)で風速が弱まります。
そのため、気圧の谷の西側で速度収束が起こり下降気流が生じて地上付近では高気圧が発生します。
逆に気圧の谷の東側では速度発散が生じ、不足した空気を補うように地上付近に発生した温帯低気圧から上昇気流が生じます。
以上のように発散と収束は表裏一体にあり、空気の過不足を小さくしています。
次回は発散・収束と渦度の関係を取り上げる予定です。