今回のテーマは太陽高度角にかかわる3つの要素と南中高度角、赤緯についてです。
前回の記事では次の2つを取り上げました。
A 地球全体が受ける太陽放射と太陽定数
B 地表面が受ける放射強度と太陽高度角
今回からしばらくBの太陽高度角を求める方法の理解を深めていきます。
目次
1.前回の復習
地表面が受ける放射強度=太陽定数× sin α
● 太陽定数・・1370Wm–2 (1.37KWm–2)
● α ・・太陽高度角
2.太陽高度角を決める3つの要素
地上のある地点における太陽高度角は次の表の3つの要素(❶~❸)の組み合わせによって決まります。
そして、それぞれには地球の特徴4つが関係しています。
高度角を決める要素 | 地球の特徴 | |
❶ | 季 節 | 公転軌道が楕円形 ・ 地軸の傾き |
❷ | 緯 度 | 球 体 |
❸ | 時 刻 | 自 転 |
北半球を前提として順に説明します。
3.季節
太陽高度角、言い換えれば太陽の高さが高いか低いかは季節によって変わることは誰もが体感しているでしょう。
季節には地球の公転と地軸(自転軸)が関わります。
3-1. 地球の公転
公転軌道は完全な円形ではなく楕円形になっています。そのため地球は太陽に近づいたり遠ざかったりしています。
● 近日点・・太陽に最も接近する位置
1月上旬(冬至の10日後)
● 遠日点・・太陽から最も離れる位置
7月上旬(夏至の10日後)
となると、北半球においては冬に太陽に近づき、夏に太陽から遠ざかるということなので、楕円形の公転軌道は季節変化の大きさを和らげる効果があるといえます。
3-2. 地軸の傾き
地軸とは北極点と南極点を結んだ線のことで自転軸ともいいます。
地球の地軸は公転軌道面の垂直線に対して23.5°傾いています。
23.4°としているテキストも多いですが、ここでは23.5°とします。
地軸が傾いた状態で太陽の周りを回ることで季節の変化が生じます。以下は北半球の場合です(南半球では逆になります)。
◎ 夏至・・昼の時間が最も長い
◎ 冬至・・昼の時間が最も短い
◎ 春分・秋分・・昼と夜の長さがほぼ等しくなる
3-3. 地軸の傾きと季節変化
地軸が傾いていると地球が公転軌道のどこに位置するか(1年のうちのどの時期か)によって太陽高度角が変わることになります。
高度角が変わると地表が受ける放射強度が変化し、季節による温度変化が生じます。
4.緯度
地球は球体なので緯度があります。そして太陽高度は緯度によって差が出てきます。
例えば、赤道付近では太陽が真上近くにあってジリジリ焦がされる感じがします(行ったことないですが)。
また、高緯度では太陽は低く、光の強さも弱々しいと感じます(行ったことないですが…)。
5.時刻
地球は自転しているので、時間帯によって太陽の高さが変わります。
日の出、日没の瞬間が最も低く、正午頃に最も高くなります。
6.時刻を限定
このように太陽高度は季節、緯度、時刻の組み合わせによって決まります。
ある地点における太陽高度角を知りたいとき、3つの要素全ての組み合わせを取り入れると複雑になりすぎるので、時刻を正午に限定して考慮します。
ここで出てくるのが「南中」です。
南中とは太陽が真南に来ることで、その時刻はほぼ正午にあたります。
南中はまた一日の中で太陽の高さが最も高いときでもあります。
上記をまとめると次のようになります。
◆ 南中・・太陽がちょうど真南にくること
◆ 南中時刻・・正午
◆ 南中高度・・太陽が最も高くなるときの太陽の高度
◆ 南中高度角・・南中高度時の太陽と地表面のなす角度
時刻を南中に限定すれば、太陽高度角は季節と緯度の2つの要素によって決まります。
ですから求める太陽高度角とは南中高度角のことといえます。そして太陽高度角が決まれば太陽放射強度を算定できます。
7.南中高度角の求め方の概要
下のイメージ図を参考にしてください。
◆ 既に述べたように高度角には季節、緯度、時刻の3つの要素が関わります(図の1番上)。
❶ 時刻を限定(図の上から2番目)
既に述べたように南中(正午)に定めます。
❷ 緯度を限定(図の上から2番目)
次に緯度を0度、つまり赤道に限定した上で季節による高度角の変化を調べます。
これに関連したのが「赤緯」です。赤緯については後述します。
❸ 季節と緯度の組み合わせで高度角を求める(図の上から3番目)
季節については赤緯を用い、赤緯と緯度から高度角を算定します。
◆ 南中高度角を求める式(図の1番下)
詳しい説明は後述しますが先に式を紹介します。
α=90°-Φ+δ
α(アルファ)・・太陽高度角
Φ(ファイ)・・緯度
δ(デルタ)・・赤緯
8.赤緯
8-1. 赤緯とは
赤緯(せきい)とは「赤道上からみた天頂と太陽の位置の角度差」のことです。(「気象予報士かんたん合格テキスト」より)
別の表現だと、赤緯とは「地球の赤道面と太陽光線とのなす角度」のことです。(「イラスト図解 よくわかる気象学」より)
下のイメージ図から説明します。
8-2. 地軸が傾いていない場合
以下の図では、赤道上にあり、かつ時刻が正午である地点を赤い細長い長方形で表しています。
図の上側を見てください。
a) 地軸が傾いていないとき、図の左上にあるようにAの地点では太陽光は地面から見て垂直方向から降り注ぎます。
b) その部分を拡大したのが真ん中の図です。青い線は地面から垂直に上空に伸びた線です。
c) 右側の図は地面を下にしたものです。太陽光は天頂つまり真上から差し込んでいます。
8-3. 地軸が23.5° 傾いている場合
図の下側を見てください。
a) 赤道面も公転軌道面に対し23.5° 傾いているので、地点Aの位置もずれてA’になります。(左下)
b) その部分を拡大したのが真ん中の図です。
c) さらに地面を下にすると、太陽光は真上ではなく斜めから差し込んできます。
この場合(つまり夏至では)、真上の方角(天頂方向)と太陽の方角との差は地軸の傾きと同じ数値、23.5° になり、この角度が赤緯になります。
8-4. 赤緯の数値
太陽が真上(天頂)より北側にあるとき赤緯の数値はプラス、南側にあるときはマイナスで表します。主な時期の数値は以下になります。
夏至:+23.5°
秋分・春分:0°
冬至:-23.5°
9.南中高度角の式の成り立ち
赤緯が理解できたところで、今度は緯度も加えて南中高度角の式がどのように導き出されるか考えてみます。
下のイメージ図を見れば解説がなくても分かると思いますが、一応 番号に沿って説明します。
❶と❷ 緯度 Φ
最初に緯度とは何でしょうか?
「緯度は、その地点における天頂の方向と赤道面とのなす角度で表される。赤道が緯度0度となり北を北緯、南を南緯といい北極・南極が90度となる。」(Wikipediaより引用)
ということですが、下記の図では地球の中心から地上のある地点まで線(青紫)を引いたとき、その線と赤道面(赤)とのなす角度としても表現しています。
地球の中心から地上のある地点まで伸びている線は、そのまま真上(天頂方向)に伸びています。
❸ 90°-Φ
地表面は緑色の線で示しています。
緯度を表す青紫の線は真上(天頂)に向かって地面とは垂直に伸びています。
すると赤道面と並行する赤い線と地表面を表す緑の線との角度は90°から緯度Φを引いた角度になります。
❹と❺ 赤緯
次に右側の地球を見てください。
既に学んだ赤緯 δ は赤道面から真上(天頂)に伸びる線と太陽光が降り注ぐ方角(オレンジの線)とでできる角度を示しています。
赤緯δ を緑色の線で示す地点まで そのまま持っていくと、❸の90°-Φ の上に重なるようなかたちになります。
❻ 南中高度角α
太陽光が注ぐ線はオレンジ色の線で、その方角は地球上どこでも同じで平行になっています。
ですから図で分かるようにオレンジ色の線と地表面との角度は、90°-Φ + δ となり、これが南中高度角になります。
前回の記事と合わせて放射強度についての式は以下になります。
地表面が受ける放射強度=太陽定数× sin α
南中高度角 α = 90°-Φ + δ
次回は放射に関する法則について調べていきます。