熱力学の第一法則に「内部エネルギー」というのが出て来ます。熱力学の第一法則が何かを学ぶ前に、内部エネルギーが何かを先に確認しておきたいと思います。
目次
1.エネルギーと仕事
1-1. エネルギーとは
エネルギーとは、仕事をする能力のことです。
1-2. 仕事とは
ある物体に力F が働いて、物体が力の方向に距離S だけ動いたとき、力F はこの物体に FS=仕事W をしたことになります。上の図で説明します。
手が青い箱を押して(力を加え)箱が動く(力の方向に運動する)とき、手は箱に対して仕事をしたと表現します。
こう考えると物体がエネルギーを持っているとは、物体が他の物体を動かすことができる状態にあることといえます。
2.力学的エネルギー
力学的エネルギーとは位置エネルギーと運動エネルギーの合計のことです。
力学的エネルギー = 位置エネルギー + 運動エネルギー
2-1. 位置エネルギー
位置エネルギーとは・・
物体の位置のみによって決まるエネルギー
この図のボールAは高い位置にあります。もしこのボールが落下するなら下のボールBにぶつかりBを動かします(分かり易いようにボールは地面の上を動く形にしてあります)。
つまりボールAはボールBに対して仕事をしました。この場合、Aは高い位置にあるということでエネルギーを獲得しています。
2-2. 運動エネルギー
運動エネルギーとは・・
運動している物体がもつエネルギー
運動エネルギーについて例えで考えます。アメフトの選手が全力で走り込んでいるなら、他の選手を突き飛ばすことができますよね。この場合、走っている選手はエネルギーを持っている、そんなイメージでしょうか。
このように選手Aが選手Bに向かって運動しBにぶつかるならBは動きます。この場合のAは運動エネルギーを持っているということになります。
3.内部エネルギー
3-1. 内部エネルギーとは
さて、やっと内部エネルギーが登場します。
内部エネルギーとは・・
「物質系のエネルギーのうち、系全体としての位置エネルギーや運動エネルギーを除いた物体内部の状態で決まるエネルギー。(大辞林 第3版)」
もう少し分かり易く言うと、これまで考えてきたような力学的エネルギーは物体の持つエネルギーです。しかし各々の物体は分子や原子で出来ています。分子や原子もそれぞれがエネルギーを持っていて、これら物体内部に蓄えられているエネルギーを内部エネルギーと呼びます。
3-2. 内部エネルギーにおける位置エネルギーと運動エネルギー
まず、このイメージ図をご覧ください。
この図でいえば物体(大きな丸)は位置エネルギーや運動エネルギーを持っています。
しかし物体にはその内部にもエネルギーが蓄えられていて、そのエネルギーとは物体を構成する原子や分子が持つものであると言えます。
この図では小さな青い丸が原子や分子を表しています。
力学的エネルギーには位置エネルギーと運動エネルギーの二種類がありました。同様に内部エネルギーも二種類に分けられます。
位置エネルギー = 分子間引力
運動エネルギー = 熱運動
しかし、気体の状態では分子と分子の距離が大きいので分子間で引力はほとんど働かず、分子間力は無視することができます。ですから
内部エネルギーとは・・分子や原子の熱運動による運動エネルギー
といえます。もっと感覚的に言うなら、この場合の熱運動とは空気分子のスピードであり、温度とも言えます。