過去の記事で寒帯前線ジェット気流(強さ)と偏西風波動(波)の意味合いの違いを取り上げました。
前回の記事では、偏西風がどんな過程を経て強さを増して寒帯前線ジェット気流が生じるかを説明しました。
今回は寒帯前線ジェット気流が波となって蛇行する成因を簡潔に説明します。
目次
1.プラネタリー波の中で蛇行
まずは偏西風の大規模な蛇行であるプラネタリー波の概要を説明します。
模式図「プラネタリー波の成因」をご覧ください。大きな緑の帯がプラネタリー波です。

プラネタリー波は波数が1~3、波長が10,000kmを超えるような地球規模の波で超長波とも呼ばれます。
プラネタリー波の成因は以下の3つです。
A 大規模な山岳<力学的要因>
ヒマラヤ山脈・チベット高原・ロッキー山脈など
B 大陸と海洋の熱容量の差<熱的要因>
ユーラシア大陸・北アメリカ大陸と大洋
C 地球が球形で自転していること
これが本質的な成因ですが、深い内容なので、ここでは省略します。
2.プラネタリー波と寒帯前線ジェット気流の位置関係

図「プラネタリー波と寒帯前線ジェット気流の位置」をご覧ください。
緑色の帯はプラネタリー波が取りうる範囲のイメージです。実際には波数はその時々で違ってきます。停滞またはゆっくり東進しています。
プラネタリー波の帯の中に細い青線で示した寒帯前線ジェット気流があります。これもイメージです。
プラネタリー波は偏西風の大きな流れなので、それが蛇行するなら当然、寒帯前線ジェット気流も蛇行します。
後述しますが、寒帯前線ジェット気流が強まると傾圧不安定波という波が発生します。両者は緊密に対応しているので、青線は傾圧不安定波も示しています。
3.寒帯前線ジェット気流の蛇行で大気の大循環はどうなる?
前回の記事で寒帯前線ジェット気流は寒帯前線帯と対応し、寒帯前線帯はフェレル循環と極循環の境目であると説明しました。
寒帯前線ジェット気流がこんなに北へ南へと位置を変えているということは、フェレル循環・極循環の範囲も北へ南へ広がったり狭まったりしているのでしょうか?
そうとはいえません。大気の大循環のそれぞれの範囲は長い時間の平均から判断しています。
でも瞬間、瞬間を見ると寒気と暖気の境目は絶えず位置を変えているので、対応するジェット気流も絶えず位置を変えています。
図には参考として亜熱帯ジェット気流の位置も描いています。寒帯前線ジェット気流と比べて蛇行が小さいので完全な円で示していますが、実際にはある程度蛇行しています。
4.寒帯前線ジェット気流が傾圧不安定波を生む

模式図「寒帯前線ジェット気流と傾圧不安定波」をご覧ください。
寒帯前線帯では水平温度傾度が大きいため、大気の傾圧性が大きくなっています。
▷ 「傾圧大気の定義と等温面の関係」をご覧ください。
さらに傾圧性が大きくなると偏西風が高度とともに急激に強くなり、上層にある寒帯前線ジェット気流も非常に強くなります。
▷ 「水平温度傾度と鉛直速度傾度(温度風の関係をちょっと詳しく2)」をご覧ください。
このように下層と上層の風速の差、つまり鉛直シアが大きい状態は不安定な状態であり、何らかの風の乱れ(じょう乱)ができると、小さな波ができます。
小さな波は次第に大きくなり、傾圧不安定波が発生します。
傾圧不安定波とは「傾圧大気中で時間とともに振幅が増大する波動という意味」です。(※)
※ 『一般気象学 第2版補訂版 小倉義光著 東京大学出版会』187ページ
傾圧不安定波は温帯低気圧の発達と深い関わりがあります。以下の記事もご覧ください。
▷ 「4次元で理解(傾圧不安定波9)」
▷ 上記を含む一連の記事「傾圧不安定波1」~18 も参照してください。
5.傾圧不安定波が寒帯前線ジェット気流の蛇行を大きくする
傾圧不安定波が成長し温帯低気圧が発達すると、寒気が南下し暖気が北上することで寒帯前線ジェット気流の流れを変化させ、その蛇行を大きくします。
つまり、寒帯前線ジェット気流と傾圧不安定波はお互いを強め合う(または弱め合う)関係にあるといえます。
以上が寒帯前線ジェット気流が蛇行する、ごく基本的な理由になります。
次回は亜熱帯ジェット気流と寒帯前線ジェット気流の季節ごとの位置の変化について取り上げます。
