傾圧性大で不安定(傾圧不安定波14)

偏西風の蛇行と渦

前回から傾圧不安定波の誕生から消滅までを順を追って取り上げています。今回は温度差が大きくなる時点から傾圧不安定波が生じるまでを調べます。

最初に以前の記事に載せた傾圧不安定波による熱輸送のサイクルのイメージ図を見てください。この図の上部の淡い緑の線で囲まれた部分を今日考慮します。

気温差大から偏西風蛇行まで

1.南北の水平温度傾度(気温差)が大きくなる

下のイメージ図は中緯度の大気を立体的に表したものです。

温度差大で傾圧不安定に

上の方は温度差がそれほど大きくない時の大気です。地衡風の鉛直シアを表現するため、偏西風が吹いている辺りで大気を二つに割ってみました。

下の方は南北の水平温度傾度、つまり温度差が大きくなった時の状態です。

大気の側面を見ると等温面の間隔が狭くなり、上空の等圧面における等温線の数も増えています。

2.地衡風の鉛直シアが大きくなる

南北の気温差が大きくなると地衡風の鉛直シアが大きくなり、上空にいくほど強く吹くようになります。

この状態は運動力学的に不安定なので傾圧不安定と表現します。

この不安定な状態が強まっていくと臨界(限界)に達します。

3.臨界値を超える

臨界値を超えると、あるいは何かちょっとした気流の乱れ擾乱)が生じると偏西風が波打ち始め偏西風波動となります。偏西風波動が傾圧不安定波(時間と共に発達する波)になるかどうかは波長などの要素が関係します。

偏西風蛇行のきっかけ

4.渦の発生と偏西風蛇行の仕組み

この小さな蛇行は高気圧性の時計回りの渦低気圧性の反時計回りの渦を引き起こします。

この渦によってさらに蛇行は大きくなり、蛇行が大きくなると渦のエネルギーも大きくなります。

その仕組みを下の図で表現しました。3つの段に分けたので、上から順に説明します。

偏西風の蛇行と渦

4-1 真っすぐな偏西風と回転する渦が合わさると(図の上の段)・・

 オレンジの矢印・・偏西風

 青い矢印・・渦を回る風

 4-1-1 高気圧性の渦の場合(左上)

 ● 偏西風の中の北側

   偏西風本来の西風と時計回りの風の西風とが合わさる

 ● 偏西風の中の南側

   偏西風本来の西風と時計回りの渦の東風とが打ち消し合う

4-1-2 低気圧性の渦の場合(右上)

 ● 偏西風の中の北側

   偏西風本来の西風と反時計回りの風の東風とが打ち消し合う

 ● 偏西風の中の南側

   偏西風本来の西風と反時計回りの風の西風とが合わさる

4-2  風の強さの変化(真ん中の段)

 上記の理由により偏西風の中で風の強いところ、弱いところができます。

● 高気圧性の渦があると・・

   偏西風は北側で強く、南側で弱くなる

● 低気圧性の渦があると・・

  偏西風は北側で弱く、南側で強くなる

4-3 偏西風の蛇行と気圧の尾根、谷(図の下の段)

偏西風内の風速の違いによりさらに回転成分が強まって偏西風は蛇行する

※ この現象は「渦度」のところで学びました。⇒「渦度 カーブする道 直線道路

北側に膨らんだところが気圧の尾根、南側に膨らんだところが気圧の谷となる

5.傾圧不安定波の成長

偏西風の蛇行が渦を生み、渦がさらに偏西風を蛇行させ、さらに蛇行が渦を強めるという循環で波が強まり傾圧不安定波が成長します。

ですから蛇行が渦を生むとも、渦が蛇行を生むともいえます

6.偏西風の蛇行と温度移流

偏西風が蛇行し始めると温度移流により気圧の湾曲が生じ、気圧の湾曲が偏西風の蛇行を強めるという点もありますが、機会があれば後日取り上げたいと思っています。

次回は傾圧不安定波における収束、発散と低気圧の発達について考えます。

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