スポンサーリンク

中層大気の気温の特徴

成層圏と中間圏を合わせて中層大気といいます。気象現象のほとんどは対流圏で起きますが、中層大気で生じる現象も大きく関わってきます。今回は対流圏の常識が通じない中層大気の気温分布を考えます。

1.イメージ図の説明

冒頭のイメージ図は1月における経度平均気温の高度緯度分布を表したものです。経度平均気温とは、緯度線に沿って帯状に平均した気温のことです。図では温度の高いところ、低いところを色で示しています。

赤・・高い  ピンク・・やや高い

青・・低い  水色・・やや低い

2.夏半球と冬半球

大気の鉛直構造のところでは季節や緯度の違いは条件に入れず、ただ高度と共に気温がどう変化するのかを考えました。

ところが、この図を見て分かるように実際には北半球と南半球とでは高度別の平均気温に大きな違いがあります。

どうして、このような気温分布になるのか、その理由を考えていきます。

また説明を簡単にするため、図のように季節を1月に設定し、北半球を冬、南半球を夏とします。

この場合、北半球を冬半球、南半球を夏半球という呼び方もできます。

そして、冬半球の極(1月だと北極)を冬極、夏半球の極(1月だと南極)を夏極といいます。

北半球が夏、南半球が冬の場合は分布図の形は反転します。

まずは緯度・高度別の気温分布の外観を見てみましょう。

3.気温分布図の概要

3-1. 高度10km~20km

高度10km以下の対流圏では私たちが体感しているように、高緯度地方ほど気温が低くなっています。

ところが、高度10km~20kmでは、低緯度帯の方が高緯度帯より低温となっています。この理由を次のイメージ図から説明します。

地表では赤道より北極・南極の方が当然、気温が低いです。

でも、対流圏界面の高さを比べると低緯度(赤道付近)は16km くらいあるのに対し、高緯度(両極付近)では8km ほどです。

対流圏内では気温は高度1kmにつき約6.5℃下がります。

低緯度では対流圏界面の高度が高いので、それだけ気温は下がり続けます。

一方、高緯度では気温がそれほど下がらないうちに対流圏界面に達します。成層圏下部ではしばらく等温なので、高度10km~20km付近では低緯度の方が気温が低い状態になるという理屈です。

3-2. 高度20km以上の成層圏

高度20km以上の成層圏では夏極が最も気温が高く、冬極に近づくほど低くなっています。

3-3. 高度70km以上の中間圏

高度70km以上の中間圏では夏極が最も気温が低く、冬極に近づくほど高くなっています。

成層圏と中間圏での、この温度分布は不思議なものです。こうなるには2つの理由があります。これから考えていきます。

4.上昇気流と下降気流

下の図は以前の記事「オゾン層より成層圏界面の気温が高い理由(大気の構造3)」に載せたものです。

矢印は大気の流れです。この図で分かるのは中層大気でも地球規模の大気の動きがあるということです。

大きく見ると、高度約30kmより下層では低緯度から高緯度に向かう大気の流れがあります。(ブリューワードブソン循環)

高度30kmより上層では夏半球で上昇気流冬半球で下降気流となっています。

すると、夏半球では上昇気流に伴う断熱変化により気温は低下し、冬半球では下降気流に伴う断熱変化により気温が上がることが分かります。

5.中間圏では断熱変化

成層圏は飛ばして先に中間圏を考えます。

中間圏では断熱変化の効果がそのまま当てはまり、夏極で最も気温が低く、冬極に近づくに連れて気温は高くなっていきます。

6.成層圏では日射量

6-1. 白夜と極夜

成層圏では逆に夏極が最も気温が高く、冬極に近づくに連れて気温は低くなっていきます。これは先ほど考慮した断熱変化の効果と矛盾しているように感じます。ここで関係するのが日射量です。

夏極付近では夏は白夜となり一日中太陽の光が注いでいます。反対に冬極では極夜となり一日中太陽の光が当たりません。ですから夏極と冬極では日射量が大きく異なります

 

6-2. 紫外線の吸収

大気の構造のところで扱ったように成層圏で気温が上昇する理由は、オゾンの生成・消滅によって紫外線が吸収されるからです(中間圏にはオゾンがありません)。

太陽光が長い時間当たる夏極では紫外線の吸収が多くなり、大気の加熱効果が高くなります。

逆に冬極では太陽光が当たらないため紫外線吸収による大気の加熱効果がありません。

これが夏極の気温の高さの一つの要因です。

 

6-3. 放射冷却

冬極では日が当たらないため放射冷却がどんどん進み、気温が低下し続けます。

 

6-4. 断熱変化と日射量の兼ね合い

成層圏においても上昇気流・下降気流による断熱変化はあります。

ですから成層圏では気温を高める要素と低める要素両方が関わっていることが分かります。

ただ、断熱変化による効果より日射量の違いによる効果の方が大きいので、夏極では気温が高く冬極では気温が低くなります。

7.まとめ

高度別の気温を 高>低 で表し、その要因を加えると以下になります。

◇ 10~20km 高緯度>低緯度(対流圏界面の高度)

◇ 20~70km 夏極>冬極(日射量)

◇ 70km以上 冬極>夏極(断熱変化)

幾つかのテキストや資料では他の要因も挙げられていたり説明が異なっていたりするのですが、深入りせずにここまでにしておきます。

中層大気では気温だけでなく風にも対流圏にはない特徴があります。次回は風に注目します。

次回の記事で中層大気の風と風向をまとめてイラストにしたものを載せたので、ご覧ください。

『テイコー・テイコー・トー・サイ・サイ』ってな文句が出てきます。