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大気の構成と鉛直構造(大気の構造1)

大気は生物が生きていくために絶対必要なものです。そして、気象の3要素の一つです。

これからしばらく地球大気の構成、構造、循環について学び、それらが命や気象にとってどんな意味を持つかを取り上げます。

1.大気が必要なのはなぜか?

主な理由と関係する気体をまとめてみました。

● 病気にならないため(紫外線を防ぐオゾン)

● 凍死しないため(温室効果ガス)

● 呼吸するため(酸素)

● 食べるため(光合成に必要な二酸化炭素)

● 大気現象によって水と熱を循環させるため

そして、大気は気象の3要素の残り、エネルギーや水との複雑なやり取りをしながら生命を守り維持してくれています。

2.大気の組成

大気の組成は上空80km くらいまではほぼ変わりません。

ただ、水蒸気は場所や時間によって大きく変化します。それで、一旦、水蒸気はないとして(これを乾燥空気と言います)気体の割合を円グラフにすると以下になります。

実際は乾燥空気に水蒸気が加わります(これを湿潤空気といいます)。

3.大気の鉛直構造

大気は鉛直方向において、温度変化に基づいた4つの層を有しています。まずは、イメージ図から全体を概観します。

3-1. 気温変化と大気層

地表から上層へと見ていきます。

◆ 対流圏(気温下降)

地表面から気温が下がりきる高度 11km あたりまで

◆ 成層圏(気温上昇)

対流圏との境(対流圏界面または圏界面)から気温が上がりきる高度 50km あたりまで

◆ 中間圏(気温下降)

成層圏との境(成層圏界面)から気温が下がりきる高度 80km あたりまで

◆ 熱圏(気温上昇)

中間圏との境(中間圏界面)から高度 500km あたりまで

主な区分は以上の4層です。後述しますが、各層の境の高度は状況によって変わることがあり絶対的なものではありません。

3-2. その他の区分

◆ オゾン層電離層

これらについては次回の記事で取り上げます。

◆ 中層大気

成層圏と中間圏を合わせて中層大気といいます。

◆ 均質圏

対流圏から中間圏までは大気の組成の割合が同じなので、このようにいいます。

◆ 外気圏

熱圏の上端(熱圏界面)の上、高度 1000km あたりまでを外気圏とする場合もあります。

◆ 大気圏

大気圏がどこまでかは、いろいろな考え方があるようです。

この図では熱圏までを大気圏、外気圏の外側を宇宙空間としています。

高度 100km までを大気圏、その外側を宇宙空間とする見方もあるので、左側にカッコつきで書きました。その他の見方もあるようです。

4.対流圏の特徴

ここからは、各層について詳しく調べていきます。下の方に先ほどと同じイメージ図があります。

4-1. 高度と気温の関係

● 地表面の平均気温・・約15℃(288K)

● 気温減率・・6.5℃/km

高度が1km上昇すると気温が6.5℃の割合で下降します。

● 対流圏界面の気温・・-56℃前後

4-2. 層の厚さ

平均的な対流圏の厚さ、言い換えれば対流圏界面の高度は地表面から高度約 6~16km 程度です。

かなりバラつきがありますね。対流圏は気温が高いほど層が厚くなるので、対流圏界面の高度にも次の傾向が表れます。

● 高緯度<低緯度

● 冬<夏

4-3. 大気の運動

対流圏では水平方向の運動(風)も鉛直方向の運動(上昇気流・下降気流)も活発です。日々の天気の変化はほとんど対流圏内で起きています。

4-4. 空気量

対流圏に全大気質量の約80% が含まれているとみなされています。

地表面から見て高度が約5km高くなるごとに気圧が半分になり、空気量も半分になります。

4-5. 水蒸気量

対流圏は他の大気層に比べ水蒸気を多く含んでいます。水蒸気量は時間的、空間的に変動が大きいのも特徴です。

4-6. 対流圏内の区分

対流圏はさらに幾つかの層に分けられます。詳しくは「大気の力学と運動」の項目で扱います。

5.成層圏の特徴

5-1. 高度と気温の関係

対流圏界面からしばらくは気温の変化はありませんが、高度20km付近から上昇に転じます。

成層圏界面(高度50km付近)では気温が0℃ほどになります。

5-2. オゾン層

成層圏で気温が上昇する仕組みは、オゾンが生成する時と消滅する時に生じる光解離という現象によります。

成層圏の中でも特にオゾンが多いところをオゾン層といいます。このあたりの詳しい説明は次回の記事で扱います。

5-3. 大気の運動と雲

高度が増すにつれて気温が上がるので大気は安定しています。これが成層という名前の意味になります。

しかし、この場合の安定とは鉛直方向の動きが少ないという意味で、水平方向の運動(風)は大規模に起きています。

詳しくは「中層大気の運動」の項目で後日扱う予定です。

また、微量の水蒸気の凝結により真珠雲(極成層圏雲)という特殊な雲が高緯度で発生することがあります。南極に行く予定があったら ぜひ見てください。(ないか。。)

6.中間圏の特徴

成層圏界面からしばらく気温の変化はありませんが、その後降下していき、高度80km付近の中間圏界面では気温が-90℃前後の低温になっています。

中間圏の空気密度は小さく、成層圏のようなオゾンによる熱の吸収がないため気温は下がっていきます。

中間圏では光解離による熱の獲得がありますが、二酸化炭素が赤外線を放射して熱を失うため、そのバランスで気温が決まります。

既に述べたように中間圏までは大気組成の比率は一定になっています。

中間圏界面付近では夜光雲(極中間圏雲)という特殊な雲が発生することがあり、高緯度地域で見ることができます。

7.熱圏の特徴

7-1. 高度と気温の関係

中間圏界面からしばらく気温は一定のままですが、その後高度とともに上昇していきます。

熱圏の上端の熱圏界面での気温は平均して1000℃前後ですが、太陽放射の影響があり、500℃から2000℃の幅があります。

7-2. 電離層

熱圏で気温が上昇する仕組みには光解離に加えて光電離という現象が関わります。

光電離による電離状態にある層を電離層といいます。光電離についても次回の記事で詳しく取り上げます。

また、電離層ではオーロラが発生することがあります。北海道では低緯度オーロラが見えることがあるそうで、北海道に行く機会があったらぜひ見てください。(いつ見られるかは分かりません。。)

7-3. 非均質圏

熱圏では大気の組成が変わるため非均質圏と呼ばれています。

非均質圏では、重力によって重い気体は下の方に、軽い気体は上の方に振り分けられています。おおよそ以下の通りです。

◎ 80~100km付近 窒素分子

◎ 170~1000km 酸素原子

◎ 1000km付近 ヘリウム

◎ さらにその上空 水素

 

次回は大気が有害な紫外線を吸収する仕組みを考えます。

その関連で、成層圏における気温の上昇とオゾン層の生成、熱圏における気温の上昇と電離層の生成について学びます。