今回の記事では南北温度差に始まって傾圧不安定波、温帯低気圧、熱輸送までの一連の流れをサイクルとして捉えて考えています。その全体像を上記図に表しました。ちょっと複雑ですが、右上の「気温差」から矢印に沿って順に説明します。
1.気温差⇒大(右上)
熱輸送が必要になるのは中緯度においては緯度による気温差(水平温度傾度)が大きいからです。(以下は北半球として考えます)
もともと中緯度は南北の気温差が大きいですが、季節や地理的要因などで特にその差が大きくなる地域ができると考えてください。
2.大気の傾圧性⇒大
南北の温度差が大きくなると傾圧大気の傾圧性が大きくなります。
3.地衡風の鉛直シア⇒大
傾圧大気においては温度風の関係により上空ほど地衡風(偏西風)は強く吹きます。
大気の傾圧性が大きくなると鉛直シアがどんどん大きくなります。つまり、下層と上空で地衡風の強さの差が大きくなっていきます。
4.偏西風⇒強
3の理屈により上空の偏西風の強さが大きくなります。偏西風の西風成分が大きくなるという表現もできるでしょう。
5.運動力学的に不安定
鉛直シアが大きくなることで上空の偏西風が強くなると運動力学的に不安定になります。
6.臨界・擾乱
不安定な状態が強まると、ある時点で臨界に達します。つまり「もう我慢できない!」となるわけです。そうなると、或いは臨界に近い状態で何らかの空気の乱れ(擾乱)が生じると、偏西風が蛇行し始めます。西風成分の一部が南北成分に変わるともいえるでしょう。
7.傾圧不安定波発生(左下の青い枠)
1~6の仕組みで偏西風波動が生じるなら、それは傾圧不安定波と言えます。
ここからの内容は過去の記事「偏西風、低気圧に寄り道」と重なる部分が多いので、そちらも参考にしてください。その記事では立体的なイメージ図で解説していますので分かり易いと思います。
傾圧不安定波ができ始めたばかりでは、まだ蛇行は小さいものです。でも、以下の特徴が現れてきます。「傾圧不安定波」の文字の下の部分を見てください。
波が北側に膨らむ場所と南側に膨らむ場所の違いを気圧、循環、風という要素で挙げています。
左側の緑で囲ったものが北側に膨らんだところの特徴、オレンジで囲ったものが南側とみてください。
7-1 気圧
北側・・気圧の尾根(リッジ)
南側・・気圧の谷(トラフ)
以下は尾根、谷と表現します。
7-2 循環
偏西風の湾曲した所には回転する風が隠れています。
尾根・・高気圧性(右回り)
谷 ・・低気圧性(左回り)
7-3 風
尾根・・風が動きが速い
谷 ・・風の動きが遅い
この違いは遠心力から来ています。
遠心力と風速との関係については以下の過去の記事をご覧ください。
⇒ 「傾度風を感覚的に理解しよう」
7-4 収束、発散
風の動きの速さが異なると収束と発散が生じます。以前の記事「発散、収束のキホン」を参照してください。
尾根から谷へ・・尾根からの速度の速い風が、谷の速度の遅い風に追いついて収束が生じます。
谷から尾根へ・・谷の速度の遅い風は、尾根の速度の速い風に追いつかず発散が生じます。
つまり、気圧の谷の西側では収束、東側では発散となります。
この続きは次回にしますね。ちょっと休みましょう 😎