前回までは、まずは形から、ということで傾圧不安定波の3次元構造について箱をイメージして考えました。
今回はエネルギーという観点から傾圧不安定波(偏西風波動)と温帯低気圧にかかわる部分を表にしてまとめてみました。
まだ傾圧不安定波と温帯低気圧の仕組みについて詳しく取り上げていないのに、いきなりエネルギーですか?と突っ込まれそうですが、今回も全体像を大まかにとらえていただければと思います。
傾圧不安定波やプラネタリー波といった偏西風の波動には緯度による気温の差が大きく関係しています。
気温、つまり大気の熱の源は太陽からのエネルギーですから、傾圧不安定波の発生・発達、温帯低気圧の発生・発達をエネルギーという観点で見るのはとても重要です。
では、ごく簡単にですが、上記の表を一番上から順に説明していきます。(私自身まだ正確に意味をとらえているわけではないので違っている点があればご容赦ください)
1.運動エネルギー
⇒運動している物体が持つエネルギー
ボールが飛んでいるイメージです。
2.位置エネルギー
⇒ 物体が「ある位置」にあることで物体にたくわえられるエネルギー
または
⇒ 物体が高いところにあるために獲得したエネルギー
誰かがボールを掴んでいるイメージです。
3.位置エネルギー → 運動エネルギー
ボールを持っている人が手を離してボールが下に落ちるイメージです。
位置エネルギーが運動エネルギーに変換されます。運動エネルギーが増加する分だけ位置エネルギーが減少します。
4.有効位置エネルギー
⇒ 大気中の全エネルギー(位置・熱エネルギー)のうち、運動エネルギーに変換可能なエネルギー(全体の約0.5%)
最初の図では「有効位置」となっていますが有効位置エネルギーのことです。
有効位置エネルギーから変換される運動エネルギーが温帯低気圧の発達に寄与します。
では図の2番目の行を左側を説明します。
5.帯状(たいじょう)エネルギー
⇒ 帯のように一方向に働くエネルギー(直線)
6.帯状運動エネルギー
⇒ 蛇行していない偏西風がこれに当たります。
7.帯状有効位置エネルギー
7-1 水平方向
下記の図は蛇行していない偏西風が吹いている辺りを上空から見下ろしたイメージです(北半球)。
偏西風の北側に寒気、南側に暖気があります。偏西風が寒気と暖気を分ける壁のようになっています。
寒気は暖気に比べて密度が大きく重いため、より多くの有効位置エネルギーを持っています。
7-2 鉛直方向
同じ状態を鉛直方向で見ると次の図のようになります。
有効位置エネルギーは北側の寒気の方が大きいので、重い寒気は何とか下に降りよう、南側の暖気の下に潜り込もうとしますが偏西風に遮られてできません。
8.渦エネルギー
⇒ 渦(回転)方向のエネルギー(円)
以前の載せた記事「渦度 風の回転成分」や「渦度 カーブする道 直線道路」を参考にしてください。
9.帯状 + 渦
帯状エネルギーと渦エネルギーを合わせたものと考えてください。
この部分が最も重要なところなので、次回 改めてじっくりとりあげます。
10.まとめ
途中ですが、次回取り上げる部分も含めてまとめると次のようになります。
● 位置エネルギーから変換される運動エネルギーが傾圧不安定波と温帯低気圧の発達の燃料となっている。
● 直線と円が合体すると蛇行する
ではまた・・