コリオリの力(回転力)を理解するカギは視点の違いと回転です。前回は視点の違いから来る見かけの動きを取り上げました。
今回はその続きで、回転によって見かけの動きが曲げられる過程を取り上げます。だいぶコリオリ力誕生の過程がつかめてきます。
目次
1.前回の復習(カギA 視点の違い)
既に述べたように、コリオリ力を理解するカギは【視点の違い】と【回転】です。それぞれが生み出すものは・・
A 視点の違い(地上と上空) ⇒ 見かけの動き
B 回転(自転) ⇒ 見かけの動きが曲げられる
A+B ⇒ コリオリ力(見かけの力)
前回の記事では A 視点の違い を説明するために人工衛星と 移動する地上の人間の例えを用いました。
動く歩道上にいる人間の上空を人工衛星が通過する時、両者ともゆっくり動いているなら、人間と人工衛星それぞれ自分は止まっていて相手が動いているように見えます。
このように違った視点で相手を見ることで「見かけの動き」が生じるということです。
2.カギB 回転(円盤の例え)
2-1. 地球を円盤に例えると
今回の記事では カギB 回転 を説明するために、人工衛星と 回転する円盤上の人間の例えを用います。それぞれが表す対象を念頭に置いてください(北半球の場合)。
● 円盤・・ 地球
● 円盤の中心・・ 北極
● 中心からの距離・・ 緯度の違い(距離が長いほど緯度が低い)
● 円盤の回転・・ 地球の自転
● 人工衛星・・ 上空の風
2-2. 4つのパターンで考えます
円盤と人工衛星の見え方を次の要素で分類します。
■ 円盤が止まっている時 or 動いている時
■ 人工衛星から人を見下ろした時 or 人が人工衛星を見上げた時
上記を組み合わせた4つのパターンを考察します。
なお、人工衛星の飛行も円盤の回転も非常にゆっくりで、それぞれ自分は止まっているように感じるという設定にしてあります。
2-3. イメージ図の説明
● 円・・回転する円盤 反時計回りに回る
● 青紫の物体・・人工衛星 図の下方向に移動する
● 時刻・・人工衛星が位置する時の時刻
● A~E・・人(Eは人?)
3.円盤が停止中
3-1. 人工衛星から見た人の動き(上記の図)
この場合、人工衛星は時間と共にAさんから始まってEさんまでを真下に見ます。
3-2. 人から見た人工衛星の動き(下記の図)
Aさんから始まってEさんまでの人たちは時刻ごとに自分の真上を人工衛星が通り過ぎるのを見ることができます。
ですから、円盤が回転していないなら宇宙からも地上からも見え方に違いはないということですね。
4.円盤が回転中
4-1. 人工衛星から見た人の位置
人工衛星からすると、人間たちの位置が反時計回りに移動していくのが見えます。
0:00 には真下にAさんが見えます。
1:00 になると本来 真下に見えるはずのBさんは真下より左方向(反時計回り)にわずかに回転した位置にいるのが見えます。
2:00 になると、本来真下に見えるはずのCちゃんは真下よりさらに左方向(反時計回り)に回転した位置にいるのが見えます。
以降、時間を追うごとに人は左方向(反時計回り)に離れた位置にずれて見えます。
4-2. 人から見た人工衛星の動き
円盤に乗っている人たちは自分たちは止まっていると感じています。地球上にいる私たちが止まっていると感じているのと同じです。
でも空を見上げると人工衛星は右カーブしながら離れて行くように見えます。
0:00 にはAさんは真上に人工衛星を見つけることができます。
1:00 になるとBさんは人工衛星が真上より右方向(時計回り)にわずかに離れて飛んで行くのが見えます。
2:00 になるとCちゃんは人工衛星が真上よりさらに右方向(時計回り)にずれて飛んで行くのが見えます。
以降、時間を追うごとに人工衛星は人から より右方向(時計回り)に離れて行くように見えます。
こうして地上の人間からは人工衛星が何かの力を受けて右へ右へと曲げられるように感じます。
5.円盤の端から中心に向かう場合
このケースも同じような考え方でコリオリ力が生じる過程をイメージすることができます。
ただ、説明が長くなってしまうので、ここでは省略します。別に機会があれば紹介できるかもしれません。
6.見かけ上の動き
6-1. 回転速度の違い
以上、まとめると
人工衛星の視点・・人間が回転している
人間の視点・・人工衛星が曲がって行く←見かけの軌道
どうしてこのような違いが生じるのでしょうか?
円盤の動きを見れば分かりますが、円盤上の人は中心から離れているほど、同じ時間に動く距離が長くなります。下の図をご覧ください。
この図は1時間ごとにAからEまでがどれくらいの距離を移動したかを示しています。青い曲線が移動の軌跡です。
Aは中心なのでどれだけ時間が経っても位置は変わりません。
0:00 ~ 1:00 Bは❶の距離を移動します。
1:00~2:00 Cは❷の距離を移動します。
2:00~3:00 Dは❸の距離、3:00~4:00 Eは❹の距離を移動します。
見て分かるように❶から❹へと次第に距離が長くなっていきます。
つまり、中心から離れれば離れるほど、同じ時間に移動する距離が長くなるということです。
一定時間に移動する距離は速度と同じ意味ですから、中心から離れるほど回転速度が速いと言えます。
地球に当てはめるなら緯度が低いほど自転速度が速くなります。
6-2. 見かけ上の動き
では、今度は人間の立場から人工衛星を軌跡を見てみましょう。
先の図の❶から❹の距離は人間から見るなら、1時間ごとに人工衛星が自分たちからどれだけ離れて行ったように見えるかをも示しています。
それで❶から❹の長さをそのまま人工衛星までの距離に加算するなら、このような図になります。
人工衛星が右カーブして飛んで行くように見えます。
もちろん、回転しているのは人間の方なので、人工衛星はカーブもしていなければ速度が速くなっていくこともありません。あくまで同じ速さで同じ方向に飛んでいるだけです。
7.コリオリ力の意味
7-1. 見かけの力
まとめると、反時計回りに回転している円盤上を何かの物体が直進する時、円盤上からは直進する物体が右へ右へと曲がって行くように見える、ということです(円盤が時計回りに回転しているなら左へ左へと曲がって行くように見えます)。
つまり、回転が見かけの動きをカーブさせるのです。
そして円盤上から物体を見る時、物体に何かの力が働いて向きが変わるように見えます。この何かの力、みかけの力をコリオリ力と呼びます。
地球に当てはめると、自転によってコリオリ力が働くと言えます。
7-2. コリオリ力の性質
コリオリ力が生じる理屈が感覚的に掴めたでしょうか?地球に当てはめたとき、次のようにまとめることができます。
◎ コリオリ力は緯度による自転速度の違いによって生じる。
<低緯度ほど自転速度が速い>
◎ コリオリ力は北半球では右向きに、南半球では左向きに働く。
<北半球では反時計回り、南半球では時計回りに自転>
◎ コリオリ力は見かけ上の力で、物体の進行方向を変えるが進行速度を変えるものではない。
<視点の違いによって生じる>
◎ コリオリ力は高緯度ほど強く働く。
最後の「高緯度ほど」という点は別記事で紹介できるかと思います。
次回の記事で、今回とほぼ同じようなことを地球儀で例えて確認します。