台風の構造1(台風5)

壁雲・スパイラルバンド・暖気核・循環、これらが台風の構造のカギになります。

台風のイラストはお馴染みのものですが、少し専門用語を加えたものを上記の図にしました。

上段が平面図、つまり気象衛星から見た台風の形です。下段は台風の鉛直断面図です。では、少しずつ説明していきます。

1.上空から見た雲

1-1 目

真ん中の白い円は台風の目(眼)を表しています。典型的な目の中では雲がなく風も弱く穏やかな天気になっています。勢力の弱い台風や上陸した台風には目がないものもあります。

目の直径は数十km (20~200km) ありますが、勢力が強いと目は小さく、衰退し始めると大きくなる傾向があります。例外として環状台風は目が大きく勢力が強いです。

1-2 壁雲

目の周りの灰色の丸で表しているのは、目を取り巻く非常に発達した背の高い積乱雲群です。これを壁雲(アイウォール)と言います。

壁雲は中心から約100km 離れた範囲で取り囲み、その高さは12km から 16km に達するものもあります。

1-3 スパイラルバンド

壁雲の外側(中心から約100km ~約300km )では壁雲取り囲むらせん状の積乱雲・積雲の列がみられます。これをスパイラルバンド(スパイラルレインバンド、らせん状降雨帯)と言います。

スパイラルバンドには内側降雨帯(インナーバンド)と外側降雨帯(アウターバンド)があります。この図では台風本体の一部になっているスパイラルバンドを内側降雨帯、本体から離れているスパイラルバンドを外側降雨帯のつもりで描きました。しかし両降雨帯は必ずしも明確に分けられるものでもありません。

スパイラルバンドが通過する時には短時間強い雨と強風がありますが、通り過ぎると青空が見えることもある変わり易い天気になります。

2.鉛直断面図で見た雲

目の周りには壁雲となる発達した積乱雲群があります。

その周囲に本体に組み込まれているスパイラルバンド、本体から離れているスパイラルバンドが描いてあります。

3.温度構造

黄色で示した範囲が暖気核です。

台風内では同高度の周囲より気温が高く、特に中心部で際立って気温が高くなっています。これを暖気核(ウォームコア)と言います。暖気核は上層ほど顕著です。

暖気核は水蒸気の凝結に伴う潜熱の放出と、目 付近の下降気流による断熱圧縮による昇温によって生じます。

4.風・気流の流れ

台風を取り巻く風・気流は2つの循環系に分けることができます。

◎ 1次循環・・目を中心に水平面で回転する反時計回りの低気圧性の風(図の赤い矢印)

◎ 2次循環・・壁雲などの積乱雲を作る鉛直面での空気の流れ(図の青い矢印)

2次循環には次のような流れがあります。

下層で収束する風 ⇒ 積乱雲を作る上昇気流 ⇒ 上層で発散する風 

上層で発散した風はいずれ下降気流となるわけですが、台風の周囲にある高気圧の下降気流を強めるという形を取ったり、台風の中でも一部下降気流となることがあります。

また目の中では下降気流となっています。

1次循環、2次循環と区別していますが、実際の空気の流れは立体的です。竜巻をイメージすると、風は回転しながら上昇していきます。台風も特に壁雲内部では竜巻の様な空気の流れがあります。そのことは次回につなげます。