寒帯前線ジェット気流とは何か、偏西風波動とは何か、寒帯前線ジェット気流と偏西風波動はどのような関係があるのか、それぞれの立ち位置と両者の違いを簡潔に説明していきます。寒帯前線ジェット気流の入門編です。
目次
1.寒帯前線ジェット気流
早速ですが模式図「寒帯前線ジェット気流の立ち位置」をご覧ください。囲みと矢印の意味を外側から順に説明します。
1-1. 緯度、偏西風帯、中緯度の偏西風帯
これらの意味についてはこちらの記事をご覧ください。
▷ 「偏西風の吹く範囲はどこ」
簡単に説明すれば、偏西風帯とは偏西風が吹く範囲のことです。中・上層では中緯度と高緯度、下層では中緯度に当たります。
寒帯前線ジェット気流と関連があるのは上層の中緯度の偏西風帯です。

1-2. 中緯度の偏西風とジェット気流
中緯度の偏西風とは中緯度の偏西風帯で実際に吹いている西風のことです。図の黄色い矢印です。
偏西風の最も風速の大きい流れがジェット気流です。図の紫の矢印です。
この範囲で生じるジェット気流は2つあります。亜熱帯ジェット気流と寒帯前線ジェット気流で、両者は位置と成因が異なっています。
亜熱帯ジェット気流(図では省略)はハドレー循環に伴って生じるもので、ハドレー循環とフェレル循環の境付近で吹きます。
寒帯前線ジェット気流は、この後の一連の記事で解説しますが、亜熱帯ジェット気流より高緯度側にあり、南北の温度差によって生じます。
亜熱帯ジェット気流とハドレー循環については「亜熱帯ジェット気流とハドレー循環の成因」をご覧ください。
1-3. 強風軸
ジェット気流の真ん中を貫く細い線が強風軸です。
気象庁の用語によると強風軸について「高層天気図などで強風帯の中心を連ねた線。ジェット気流の中心線は典型的な強風軸である。」とあります。
ジェット気流は幅と厚みを持っていますが、強風軸は線です。
2. 偏西風波動
偏西風波動とは偏西風の蛇行のことです。偏西風波動は主にプラネタリー波や傾圧不安定波を指しています。次の模式図をご覧ください。

2-1. プラネタリー波
プラネタリー波は波数が1~3、波長が10,000kmを超えるような地球規模の波で超長波とも呼ばれます。大規模な山岳や海陸の温度差をきっかけに生じます。
2-2. 傾圧不安定波
傾圧不安定波は、プラネタリー波という大きな流れの中で生じる中規模の波で、南北の温度差を成因とします。
一般気象学(※)では「傾圧大気中で時間とともに振幅が増大する波動という意味である。」と説明されています。
※「一般気象学 第2版補訂版 小倉義光著 東京大学出版会」187ページ
傾圧大気についてはこちらをご覧ください。「傾圧大気の定義と等温面の関係」
プラネタリー波と傾圧不安定波の関係を例えると、蛇行する大きな川の流れ(プラネタリー波)の中の小さな渦(傾圧不安定波)といえます。
傾圧不安定波については「偏西風、低気圧に寄り道(傾圧不安定波1)」から始まる一連の記事をご覧ください。
3.寒帯前線ジェット気流と偏西風波動の関係

ジェット気流は偏西風の強さに関係した現象です。
一方、偏西風波動は偏西風の波に関係した現象です。
強さと波ですから単純に比較するものではありません。
それでも、この後の記事で取り上げていきますが、両者は深く影響を及ぼし合っています。
また、偏西風が蛇行すれば、当然偏西風の最も強い部分であるジェット気流も蛇行するはずです。また、ジェット気流を伴うような強い偏西風は程度の差はあるとしても蛇行しています。それで模式図では寒帯前線ジェット気流を偏西風波動の範囲内に描いています。
やっと寒帯前線ジェット気流にたどり着きましたね。次回以降、このジェット気流の成因、特徴、亜熱帯ジェット気流との違いを考えていきます。
