水平温度傾度と鉛直速度傾度(温度風の関係をちょっと詳しく2)

前回は温度風の関係を理解する前段階として、一つの気層(最下層)を想定して、気層の平均温度の水平温度傾度と地衡風の風速との関係を考察しました。

今回は一つの気層の上に幾つかの気層が積み重なっているという見方をした場合、地衡風の風速は鉛直方向にどのように変化するのか考えていきます。

1.温度風の関係とは何か?

前回も紹介しましたが、温度風の関係とは何か先に答えを紹介します。

▶ 易しい説明・・水平方向に温度差があるとき、上空に行くほど地衡風が強くなること

▶ 難しい説明・・気層の水平温度傾度と地衡風の鉛直速度傾度の関係

温度風の関係と層厚(温度風の関係の基礎1)」と「温度風の関係と地衡風(温度風の関係の基礎2)」の記事を読めば易しい方の説明で理解できるでしょう。でも、今回は前回の続きとして難しい方の説明に焦点を当てて考察します。といっても順を追って考えていけば難しくもないです。

2.気層が重なると気圧傾度が大きくなる

模式図「温度風の関係とは・・・1」(※)をご覧ください。左下の図から時計回りに説明します。

※「一般気象学 第2版補訂版 東京大学出版会 小倉義光著」の図7.19 を参考に作図しました。(「温度風の関係とは・・・2」も同様)

◆ 水平温度傾度(左下)

このグラフは南北方向の水平温度傾度を示しています。このグラフの意味は前回の記事で説明しました。特に中緯度においては南北方向の気温差が大きいため、水平温度傾度が大きくなるという特徴があります。

前回は地表に近い一つの気層だけを対象に考えました。実際には対流圏の気層は対流圏界面まで不連続につながっています。

◆ 気層の立体図(左上)

ここで、イメージしやすいように3つの気層、A、B、Cで考えてみます。

 ◇ 気層A

一番下の気層Aが前回考えた気層だとします。気層の平均温度は南から北に向かって低くなっています。そのため、層厚は南から北に向かって小さくなります。

その結果、一定高度における気圧は南から北に向かって低くなっていき、気圧傾度によって地衡風が生じます(断面図の青い矢印)。

図で分かるように気圧傾度はあまり大きくないので地衡風の風速もあまり大きくありません(矢印が短い)。

 ◇ 気層B

次に下から2番目の気層Bを考えます。この気層も気層Aと同じほどの水平温度傾度があります。

ですから、層厚は南から北に向かって小さくなります。

すると、気圧傾度は気層Aと同じになり、地衡風の風速も同じであるはずです。

ところが気層Bは、層厚が既に南北方向に傾いている気層Aの上に乗っかっているので、傾きは気層Aより大きくなります。

結果として地衡風の風速は気層Aより大きくなります。

 ◇ 気層C

さらに、その上の気層Cについても同じような理屈で気圧傾度はさらに大きく、地衡風の風速もさらに大きくなります。

このように高度が増すにつれて風速は大きくなっています。

矢印の先端を結ぶと高度と地衡風の風速の間に正の関係があることが分かります。

◆ 鉛直速度傾度(右上)

右上のグラフは高度と風速の関係を示しています。高度の低いところでは地表との摩擦によって地衡風は吹かないので線は切れています。(地上風が吹いています)

グラフから分かるのは、既に述べたように高度と地衡風の風速の間には正の関係があるということです。

このようにして水平方向に温度差があるとき、地衡風の風速は上空に向かって大きくなっていきます。これが温度風の関係についての易しい方の説明です。(右下のグラフは後述します)

3.水平温度傾度と鉛直速度傾度の関係

今度はもう少し掘り下げて考えてみましょう。模式図「温度風の関係とは・・・2」をご覧ください。

水平温度傾度があるといっても南北方向にわずかな温度差がある場合と、かなり大きな温度差がある場合とでは地衡風の風速に違いが出てくるのでしょうか?

3-1. 水平温度傾度が小さい場合

 ◇ 模式図の左下のグラフから水平温度傾度が分かります。

南側と北側の温度差が小さいなら水平温度傾度は小さくなります(青い線)。

 ◇ 左上の立体図では層厚の南北方向の違いは小さく、下層と上層の気圧傾度にもそれほど大きな違いはありません。

 ◇ そのため矢印で示される地衡風の風速の大きさも高度による違いは大きくありません。言い換えれば鉛直方向の風速(速度)の傾度、つまり鉛直速度傾度が小さいといえます(青い点線)。

 ◇ 右下のグラフは高度と地衡風の風速の関係を示したもので、ここから、その気層の平均温度における鉛直速度傾度が分かります。

青い点線は鉛直速度傾度が小さく、線が立っています(このグラフでは線が立っている方を傾度が小さい、寝ている方を傾度が大きいとみなします)。

 ◇ このように水平温度傾度が小さいと鉛直速度傾度は小さくなります

3-2. 水平温度傾度が大きい場合

 ◇ 南側と北側で温度の差が大きいなら水平温度傾度は大きくなります(左下のグラフの赤い線)。

 ◇ 層厚の南北方向の違いが大きく、下層と上層とでは気圧傾度が大きく違っています(右上の立体図)。

 ◇ 地衡風の風速の大きさは高度によって大きく違っています(断面図の赤い点線)。

 ◇ このような場合、鉛直速度傾度が大きいといえます(右下のグラフ)。

 ◇ このように水平温度傾度が大きいと鉛直速度傾度は大きくなります

3-3. 水平温度傾度と鉛直速度傾度の関係(温度と風の関係)

模式図「温度風の関係とは・・・1」に戻ります。

ここまでの考察をまとめたのが右下のグラフです。

水平温度傾度が小さいと地衡風の鉛直速度傾度は小さく、水平温度傾度が大きいと地衡風の鉛直速度傾度は大きいことが分かります。両者には正の関係があると言えます。

結局、温度風の関係とは気層の平均温度傾度(温度)と地衡風の鉛直速度傾度(風)の関係といえます。

温度風の関係については以上です。温度風の関係について知れば偏西風やジェット気流がどのようにして生じるのか理解できます。また、温度風について理解する助けになるでしょう。