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地上風(地衡風+摩擦力)と旋衡風(気圧傾度力+遠心力)

今回は上空の風ではなく地上の人間が直接感じる風を扱います。もっとも旋衡風を経験する人は二度と経験したくないと思うでしょうが。

1.地上風

1-1. 地上風に関わる力

以前の記事「大気の力学と運動」の図を掲載します。

地上風は地衡風に摩擦力の影響を加味してバランスが取れた状態で吹く風です。

言い換えると、3つの力、気圧傾度力、コリオリ力、摩擦力のバランスの取れた状態で生じると言えます。

1-2. 摩擦力とは

ある物体が他の物体と接触しながら運動するとき、その接触面に生じる運動を妨げようとする力。(デジタル大辞泉)

1-3. 摩擦力の特徴

摩擦力は遠心力と同様 身近に感じる力なので理解しやすいですね。風に働く摩擦力について まとめると、このようになります。

◎ 風ベクトルの向きの正反対に働く→

◎ 風を弱める→

◎ コリオリ力を小さくする

◆ 高度平均1km付近まで(大気の状態により数十m~3km)に吹く風に影響を及ぼす

◆ 高度とともに弱くなる

□ 地形や建物により強くなることがある

□ 海上より陸上の方が強い

1-4. 地上風とは

地上付近を吹き、大気と地表面摩擦の影響を考えた風です。

1-5.  地上風の生じるタイミング

最初に「地上風は地衡風に摩擦力の影響を加味して」という表現を使いました。

実際には、風がコリオリ力によって曲げられていく途中で地上風となって吹くと言えるでしょう。つまり風が地衡風になる前に地上風として成立する、といえます。

1-6. 地上風成立の過程

その過程は大まかに言って次の通りです。

風が吹き始め、次第にコリオリ力と摩擦力が働き始めます。

この時点ではまだ気圧傾度力、コリオリ力、摩擦力の3つの力はつり合っていません。

風が強まるに連れ、少しずつ地衡風に近づいていきます。

地衡風になる前に3つの力(気圧傾度力、コリオリ力、摩擦力)のバランスが取れてしまいます。

風は等圧線を斜めに横切るように吹きます。

これで地上風が成立します。

1-7. 陸上と海上の違い

地上風の吹き方は陸上と海上とでは以下の違いがあります。

  風の強さ 等圧線とのなす角度

陸 上

弱 い 大きい(30°~45°)

海 上

強 い 小さい(20°~25°)

図で表すと次のようなイメージです(角度はおおよその数値です)。

 
 
 
 
1-8. 冬型の気圧配置の場合

以前の記事「風向きは力のバランスで決まる(西高東低の場合)」の図を例として挙げます。

地上風は地衡風と比べて気圧の低い方へ斜め方向に吹くことを示しています。

実際、気圧が西高東低でも、風は西から東ではなく、北西から南東に吹いています。

2.旋衡風(竜巻)

竜巻は低気圧というには小さすぎる現象ですが、その風速と破壊力は凄まじいものです。

竜巻そのものと発生のメカニズムはまたの機会にするとして、今 取り上げている、力のバランスと風の種類の中でどの位置に当たるのか取り上げていきます。

再び以前の記事「大気の力学と運動」の図を掲載します。

下の方の気圧傾度力と遠心力が重なったところ(青い楕円形)に旋衡風があります。

旋衡風とは主に竜巻のことです。

この図では竜巻などの旋衡風においては気圧傾度力と遠心力がバランスの取れた状態になっていることが示されています。

コリオリ力は? 無視します。

なぜなら、竜巻は水平スケールも時間スケールも極めて小さい気象現象だからです。

実際竜巻の水平スケールは直径が数十mから1kmくらい、時間スケールも寿命が数分から十数分がほとんどです。

ですから、地球の自転によって生じるコリオリの力は竜巻においては影響しません

気象現象のスケールについては「大気運動のスケール」をご覧ください。

ちなみに旋衡風は北半球ではほとんどが反時計回りの低気圧性循環の風ですが、一部 時計回りのものもあるそうです。

コリオリの力が無視できるなら、どうして反時計回りになるのでしょう?時間があったら調べたいです。

また、学校の校庭などで時々見かける砂ぼこりは「塵旋風」(つむじ風)といい竜巻とは別物です。

こちらは直径、高さとも数mから数十mのスケールです。上空が晴れていなければミニ竜巻のように見えなくもないですね。

次は難関、温度風に入ります・・・ 難しそう