この記事で降水に関する予報をおおまかにまとめてみました。
また、降水短時間予報の基になる解析雨量についても考察します。
1.表の見方
「降水予報・解析雨量の概観」の図表の見方を説明します(色の付いていないところです)。
▶ 解析間隔・・何分ごとに解析・作成されるか
▶ 発表間隔・・何分(何時間)ごとに発表されるか
▶ 予報時間・・どれくらい先まで予報するか
▶ 水平分解能・・画像(マス目)の細かさのことです。メッシュ・解像度・画像の精度と言い換えることもできます。
例えば、表で「1km」と書かれている場合は縦1km、横1km のマス目を指します。
▶ 解析要素・予報要素・・何を解析または予報するか
▶ 資料・初期値・・解析または予報の基になるもの
▶ 予測手法・・数値予報など予測するために用いる手法
2.解析雨量
将来を予想するには現在を知る必要があります。
解析雨量は直近1時間にどこでどれくらいの雨が降ったかを示すものです。
解析雨量は気象レーダーのデータと雨量計のデータを組み合わせて解析します。
気象レーダーは海上を含む広い範囲での降水を観測することができますが、あくまで推定値なので精度が落ちます。
一方雨量計は正確な雨量を観測できますが面的には隙間があります。
解析雨量は両者のいいとこどりをしたもので、気象レーダーで観測した降水量(推定)を雨量計で観測した降水量(実測)で補正することで、より正確な降水分布を作成しています。
気象庁のサイトでは次のように説明されています。
『解析雨量と速報版解析雨量は、気象庁・国土交通省が保有する気象レーダーの観測データに加え、気象庁・国土交通省・地方自治体が保有する全国の雨量計のデータを組み合わせて、1時間の降水量分布を1km四方の細かさで解析したものです。』
(正規版)解析雨量は1時間の降水量は30分ごと、速報版解析雨量は10分ごとに作成されます。
3.高解像度降水ナウキャスト
ここからは降水の予報です。下にも同じ図表があります。右の欄に行くほど予報期間が長くなっています。
中央が降水ナウキャストです。
降水ナウキャストには高解像度降水ナウキャストと(ただの)降水ナウキャストがあります。
高解像度降水ナウキャストが主流となっているので、(ただの)降水ナウキャストについては最後の方で簡単に取り上げます。
では、高解像度降水ナウキャストについて説明します。
▶ 発表間隔:5分
▶ 予報時間:5~30分先までの予報と35~60分先までの予報に分けられます。
▶ 水平分解能
◇ 5~30分先まで
陸上と海岸近くの海上:250m
その他の海上:1km
◇ 35~60分先まで:1km
▶ 予報要素
◇ 5分間降水量
◇ 降水の強さや分布
◇ 降水域の発達や衰弱の傾向
◇ 降水域の移動、移動速度
◇ 積乱雲の発生
▶ 初期値
以下のデータを基に初期値を求めます。
◇ ドップラーレーダー
◇ 雨量計(気象庁・国土交通省・地方自治体の雨量計)
◇ ウィンドプロファイラ
◇ ラジオゾンデ
◇ 国土交通省レーダ雨量計
▶ 予測手法
◇ 3次元の補外予測(前半に比率大)
3次元ですから立体で予測します。
補外予測(外挿ともいいます)とは簡単に言うと過去と現在のデータから未来を予測する方法です。
簡単に言えば降水分布を追跡する手法です。
◇ 対流予測モデル(後半に比率大)
気温や湿度などの分布に基づいて降水粒子の発生や落下などを計算します。
4.速報版降水短時間予報
降水短時間予報には速報版とそうでないものがあります。まずは速報版について説明します。
▶ 発表間隔:10分
▶ 予報時間:6時間先まで
▶ 水平分解能:1km
▶ 予報要素:1時間降水量
▶ 初期値:速報版解析雨量
▶ 予測手法:
◎ 補外予測(前半に比率大)
◎ 数値予報(局地・メソモデル)(後半に比率大)
5.降水15時間予報
速報版でない降水短時間予報は降水15時間予報とも呼ばれています。
▶ 発表間隔:1時間
▶ 予報時間:7~15時間先まで
▶ 水平分解能:5km
▶ 予報要素:1時間降水量
▶ 初期値:解析雨量
▶ 予測手法:数値予報(メソモデル・局地モデル)
6.降水ナウキャスト
「高解像度」が付かない従来の降水ナウキャストについて説明します。
▶ 発表間隔:5分
▶ 予報時間:5~60分
▶ 水平分解能:1km
以下は高解像度降水ナウキャストとの違いを説明します。
▶ 予報要素:新たに発生する降水などを予測に反映することはできない
▶ 初期値:ウィンドプロファイラやラジオゾンデは利用していない
▶ 予測手法:2次元(平面)の補外予測
以上、ごく簡単に概観しました。