気層の水平温度傾度と地衡風の風速の関係(温度風の関係をちょっと詳しく1)

温度風の関係とは何か?簡潔にいえば・・

水平方向に温度差があるとき、上空に行くほど地衡風が強くなること> です。

でもそれだけだと、なぜ高度が上がると風が強くなるのか、その仕組みまでは分かりません。

その仕組みを理解できれば、ちょっとひねった問題が出ても慌てずにすむでしょう。さらに、その先にある「温度風」を理解するための基礎を身に付けることができます。

今回と次回は中緯度の大気を前提に温度風の関係を説明します。中緯度は傾圧大気ですが、傾圧大気で偏西風、さらに寒帯前線ジェット気流がなぜ生まれるのか、その理由に温度風の関係が深く関わっているからです。

もっと簡潔な説明でいいという方は、以前の記事「温度風の関係と層厚(温度風の関係の基礎1)」と「温度風の関係と地衡風(温度風の関係の基礎2)」をご覧ください。

今回は温度風の関係を理解する前段階として、気層の平均温度と地衡風の強さがどのように関連しているかを考察します。

1.温度風の関係とは何か

先に温度風の関係の説明を2つ挙げます。

とりあえず、易しい方の説明が理解できれば先に進むことができるでしょう。でも、温度風の関係の理解が進めば、難しい方の説明の意味も分かるようになるはず。

ここからは気層の水平温度傾度と地衡風の水平速度(風速)の関係までを考察し、次回は地衡風の鉛直速度傾度について取り上げます。

2.気層の水平温度傾度が地衡風を生じさせる

ここから模式図「水平温度傾度と地衡風の風速の関係」を黒丸の数字の順に説明します(文字化け防止のため以下は(1)から(8)で表記します)。北半球を前提とし地球規模で考えます。

 (1) <緯度と気層の平均温度の関係>

横軸を緯度、縦軸を気層の平均温度とすると、南から北に向かって平均温度が低下していきます。このとき水平温度傾度が生じます。

 (2) <気層の平均温度と層厚の関係>

2つの等圧面に挟まれた気層の距離(厚さ)を層厚といいます。

気層の平均温度と層厚は比例しています。温度が上がると空気は膨張し上に伸びることで直感的に分かります。

 (3) <緯度と層厚の関係>

上記(1)と(2)から推測できるように南北方向に温度傾度があるなら層厚も南北方向に傾度が生じます。図にあるように南から北に向かって層厚は小さくなっていきます

このとき、地表付近の気圧が緯度にかかわらず一定で、それが層厚の下側の等圧面だとすると、層厚の上側の等圧面は南から北に向かって高度が下がっていくことになります。

 (4)<層厚(高度差)と気圧差の関係>

層厚は2つの等圧面の高度差の絶対値とみなすことができます。絶対値でみるなら高度差と気圧差は比例しているので、層厚と気圧差は比例しているといえます。

 (5)<水平気圧傾度>

 ◇ 南北方向に層厚の差があるとき、それに比例した大きさの気圧差が生じます。こうして水平気圧傾度が生じます。

 ◇ 水平方向に気圧傾度があるとき、水平方向の気圧傾度力が生じます。気圧傾度力とコリオリ力がつり合って地衡風が吹きます(水色の丸)。地衡風については「地衡風 気圧傾度力=コリオリ力(地衡風1)」をご覧ください。

 (6)<気圧傾度力と地衡風の風速の関係>

気圧傾度力と地衡風の風速は比例しています。

 (7)<偏西風>

中緯度では地衡風は西から東へ向かう偏西風となります。図では地衡風の風速を矢印の長さで表しています。

 (8)<水平温度傾度と地衡風の風速の関係>

以上から水平温度傾度と地衡風の風速が比例していることが分かります。(厳密に比例関係にあるのか説明した資料をまだ見ていないので、間違っていたなら後日修正します。)

分かりやすくいえば、南北方向の温度差が大きいほど地衡風の風速も大きくなるということです。

3.まとめ

以上の流れをまとめてみるとこうなります。

◇ 気層を南北方向で考えると

 南の方が温度が高い

 ⇒ 南の方が層厚が大きい

 ⇒ 南の方が気圧が高い

 ⇒ 東向きの地衡風(偏西風)が生じる

最初と最後を結びつけると、南北の温度差によって地衡風が生じる

◇ 気層に関連する傾度を中心に考えると

 水平温度傾度

 ⇒ 層厚(高度差)の傾度

 ⇒ 気圧傾度

 ⇒ 地衡風の風速

最初と最後を結びつけると、地衡風の風速は水平温度傾度によって決まる

ここまでは一つの気層に限定して考えました。では、上空に向かって気層が積み重なっていったら地衡風の風速はどうなるでしょうか?

次回の記事「水平温度傾度と鉛直速度傾度(温度風の関係をちょっと詳しく2)」で、そのことを考え温度風の関係に結びつけます。