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エーロゾルの役割を過飽和度から見る(水滴の生成1)

暖かい雨の全体像の記事の中で水蒸気が集まって小さな水滴となる条件について大まかに扱いました。

今回から何回かに分けて、その仕組みと小さな水滴が雲粒へと発達するプロセス、つまり凝結過程について詳しく調べていきます。

1.過飽和だけでは雲ができないわけ

雲粒へと成長する小さな水滴ができるには、湿潤空気が飽和状態を超えて過飽和の水蒸気をたくさん持つようになる必要があります。過飽和度が大きい方がいいのです。

ところが空気が過飽和状態になっても簡単には水滴はできません。水には表面張力があるからです。

表面張力は液体の表面積を最小にしようとする作用です。そして、表面積が最小になる形は球形です。

さらに、球体(水滴)が小さいほど表面張力は強くなります。

では、過飽和の状態で水滴ができたとして、その水滴は成長するでしょうか?次のイメージ図「小さな水滴ができてもすぐに蒸発」から説明します。

図の左上から反時計回りに見ていきます。

◆ ある程度の量の水蒸気がぶつかって偶然水滴ができたとします。(左上から左下)

◆ さらに多くの水蒸気がこの水滴に入り込もうとしても表面張力によって跳ね返らされてしまいます。(右下)

なぜなら水滴が大きくなれば表面積が大きくなってしまうので、表面張力がそれを許さないのです。

◆ 一方、水滴から水蒸気が出て行くのは表面積が小さくなるので大歓迎というわけです。そのため水滴はだんだん小さくなっていきます。(右下から右上)

◆ 水滴が小さくなるほど表面張力は大きくなるので、ますます水蒸気が水滴に入るのは困難になります。(右上)

◆ やがて水滴は完全に蒸発して消滅します。(左上に戻る)

結局、偶然水滴ができても成長はできないということです。

先ほど述べたように表面張力の強さは水滴の大きさによります。

それなら水滴が大きければ表面張力は弱いので成長できるのではないでしょうか?

でも最初から大きな水滴ができるというのは不自然です。そんなに偶然が重なることはないからです。

ところが実際には大きな水滴ができているのです。エーロゾル(エアロゾル)があるからです。その仕組みを説明します。

2.エーロゾルの役割を相対湿度・過飽和度から見る

2-1. エーロゾルがない場合

下のイメージ図「水滴の発生条件」を見てください。

上段の3つの四角は空気中に水蒸気が浮かんでいる様子を表しています。

下段の3つの長方形は相対湿度(または過飽和度)を長方形の高さで表現したものです。

過飽和度は相対湿度と計算方法は違いますが、相対湿度から100を引いた数値が過飽和度の数値となります。

横の線を相対湿度100%(過飽和度0%)とし、それより上に過飽和の水蒸気があるものとします。

図の左端を見てください。相対湿度は100%をはるかに超えて大きくなっていますが水滴は見当たりません。

少し前で考えたように小さな水滴ができるには、偶然 ある量の水蒸気がぶつかり合うしかありません。

その偶然が生じるには過飽和度(相対湿度)が相当高くなる(数百%)ほどの水蒸気量が必要となります。しかし、自然界では過飽和度が1%を超えることは稀です。

結論としてエーロゾルがない空気中では雲粒に成長するような大きな水滴はできないということです。

2-2. エーロゾルがある場合

塵や海塩粒子などからなるエーロゾルは、ある程度の大きさがあります。

そこに水蒸気が凝結するなら、偶然水蒸気が衝突してできた水滴より大きな水滴が初めからできることになります。

ですから過飽和度がそれほど大きくなくても存在することが可能です。

ある程度の大きさがあるので表面張力も強くなく、さらに成長する余地があります。

加えてエーロゾルの種類によっては より効率的に成長できる場合があります。

2-3. 吸湿性のあるエーロゾルがある場合

吸湿性とは空気中の水分を吸い取る性質のことです。

図の「吸湿性のエーロゾル」のところを見てください。

吸湿性のよいエーロゾルがあると、その表面が十分に水を吸収して薄い水の膜で覆われ、さらに水蒸気が凝結しやすくなります。

この場合、過飽和度が1%以下でもエーロゾルが凝結核となり水滴が発生します。

2-4. 水溶性が大きいエーロゾルがある場合

水溶性とは水に溶けやすいという意味です。図の右側を見てください。

この性質があると水滴の発生に必要な過飽和度は0.1%以下で、場合によっては未飽和で水滴ができることもあります。

なぜならエーロゾルに含まれる化学物質が水に溶けて飽和水蒸気圧が低下するからです。次回はエーロゾルの役割を水蒸気圧の面から見てみましょう。

3.まとめ

▶ エーロゾルがないとき、水滴はできたとしても表面張力によって消滅してしまう

▶ エーロゾルがあるなら、最初からある程度の大きさの水滴ができる

▶ エーロゾルに吸湿性があるなら、過飽和度が 1% 以下でも水滴はできる

▶ エーロゾルに水溶性があるなら、過飽和度が 0.1% 以下、場合によって未飽和でも水滴はできる