台風の北東500km、後ろに山がある沿岸部。竜巻ができる訳です。
2019年台風17号の接近に伴い、9月22日朝、宮崎県延岡市で竜巻が発生しました。
JR延岡駅ではJRの鉄塔が折れ曲がったり重さ約1.8トンの貨物コンテナ18個が吹き飛ばされたりしました。また自動車が横転したり住宅などは屋根や壁が吹き飛んだりして数人が怪我をしました。
延岡市では2006年にも台風による竜巻が発生しました。
この時の竜巻は藤田スケールの上から4番目の強さであるF2(推定風速50~69m/s)で、3人が死亡、140名以上が負傷した他、JR日豊線の電車の脱線するなどの大きな被害を発生させました。
1.なぜ北東?
上陸する台風の40%が竜巻を発生させるとも言われています。(今回の17号は上陸しませんでしたが)
ただ、多くの竜巻は台風の中心から数100km 離れたところ、特に北東側で発生していることも分かっています。2006年も今回も、宮崎県は台風の北東約500km付近に位置していました。これはなぜでしょうか?
まずは大前提として竜巻は発達した積乱雲のもとで発生します。それで、そのような積乱雲がどこで発生するか、そこがポイントになるかと思います。ではまず、次の報道から
NHK NEWS WEB(2019年9月22日)には、台風や竜巻などのメカニズムに詳しい名古屋大学の坪木和久教授のコメントが載せられていました。それによると
「台風の中心から離れているほうが大気の状態は不安定になりやすく、九州の東側の海岸は地形的に突風が起こりやすい」 ということです。
このコメントと他の何人かの専門家の意見に私の推測を加えると竜巻発生の背後に次の幾つかの要素があるのかと思います。
2.方角(危険半円)
台風の右側(東側)は、台風の気流速度に移動速度が重なるため、強風になりやすく、このため危険半円とも呼ばれています。
また、危険半円では、南風により太平洋から水蒸気を大量に運び込むため、積乱雲が発達しやすいです。
ただ、『東』に『北』が付いて『北東側』になる意味が今の時点で分かりません。 🙄
3.距離(アウターバンド)
台風に伴う竜巻については、台風の中心からの距離をもとに大まかに次の3つに分類できます。
最初の2つはスパイラル(レイン)バンドでの発生です。スパイラルバンドには台風本体の一部であるインナーバンド(内側降雨帯)と本体から離れたアウターバンド(外側降雨帯)に分けられます。詳しくはこちら⇒ 「台風の構造1」
◎ インナー(レイン)バンド
中心から200km以内に発生する竜巻は台風の大小にかかわらず、インナーバンド内での発生となりますが,発生数は多くありません。
◎ アウター(レイン)バンド
中心から300km付近から500km付近に発生のピークをもつものは台風の大小に大きく関わっており,アウターバンドのかかった地域で発生します。ほとんどの竜巻がこの位置で発生しています。
延岡市も竜巻発生時にアウターバンドに覆われていたようです。この衛星画像は竜巻発生時より5時間ほど経ってからのものですが、宮崎県はインナーバンドとアウターバンドの境あたりのように見えます。
◎ さらに外側
500km以上台風の中心から離れた場所で発生するもので,台風の暖気移流に伴う発生がこれに対応します。
すでに述べた通り、台風に伴う竜巻の多くは中心から数100km (特に300kmから500km付近)離れたアウターバンドで発生します。その割合は、資料によりおよそ半数とも言われています。
4.アウターバンドで多い訳
台風の中心近くでは下層から上層まで温度の高い大気に覆われています。この点で大気の状態は安定しています。
一方、中心からある程度離れたアウターバンドでは、上空には寒気があるため下層と上層の温度の差が大きく積乱雲が発達しやすいと言えます。
5.地形(沿岸前線)
地形的な面を考えると、台風によって海から吹きつける暖気と内陸の寒気との間に沿岸前線が生じ、これが沿岸部で発生する竜巻の要因となっています。
沿岸前線とは、海から吹き付ける暖気と内陸域の冷気との間にできる局地的な前線のことです。
竜巻が発生した頃、台風の中心は九州の南西部にあり、延岡市を含む宮崎県の沿岸部では台風に向かって南東の風が吹いていました。宮崎県には南東斜面の山地があるので、こうした地形的な要素も関わっていたでしょう。
6.おまけ(森氏)
TBSテレビ「ひるおび」でお馴染みの気象予報士の森朗さんの解説は面白いものでした。
台風は回転しているが、それを取り巻く雲も回転していて、それが竜巻を起こしやすくしていると言っていたと記憶しています。
正直、よく理解できませんでした。雲が回転している・・・回転するスーパーセルのことを言っていたのでしょうか?
この部分は録画していなかったので後からチェックすることができなかったのですが・・
7.台風が近づいたなら竜巻ご用心
まとめると台風に伴う竜巻が発生しやすい要素として次の3つを挙げることができます(実際にはもっと多いでしょうが)。
◆ 北東側
◆ アウターバンド
◆ 沿岸前線
8.今回は JEF1?
宮崎地方気象台は今回の竜巻について、風速約50メートルで、強さを示す改良藤田スケールでは、6段階のうち下から2番目の「JEF1」に当たるとしています。
鉄塔がぐにゃっと曲がって倒れたりコンテナが飛ばされたりしているニュース画像を見るとJF2に近いJF1だったのかなあと思います。
19号でも・・
この記事を書いてから3週間ほど経って、台風19号が東日本を襲いました。
この時も台風の北東方向に位置する千葉県市原市で竜巻と見られる突風が吹きました。