稲光、雹、竜巻、豪雨などの派手なパフォーマンスを演じるのが雷雨です。
積乱雲一つでもそれだけ派手ですが、積乱雲が幾つか集まるとメソ対流系というメソスケールの気象現象を引き起こします。メソ対流系が何なのかについては後日に回すとして、メソスケールについては既に取り上げたので、ここで復習します。
1.メソスケールの位置と内容
このページの「気象の全体像」の図を見てください。PCでは右上に、スマホでは記事の下の方にあります。
全体像の上の方に「5 大気の力学と運動」という大項目があります。この大気の運動にはスケールの大小があって、メソスケールは中規模の大気運動という括りになります。
下の図のオレンジで囲んだ範囲です。
こちらの記事を参照⇒ 「大気運動のスケール」
大雑把な図なので水平スケール・時間スケールの値もおおよそのものです。
さらに主なメソスケールの現象は以下のようになります。
これからしばらく、この表にある雷雨とメソ対流系の一部を学んでいきます。まず取り上げるのは雷雨の種類です。
2.雷雨の種類
雷雨の種類は大雑把に言って3種類あります。気団性雷雨、マルチセル型雷雨、スーパーセル型雷雨です。その3つに積乱雲1個による雷雨を加えて下の図から説明します。
3.単一の積乱雲による雷雨(左下)
夏の午後に現れる入道雲たった一つ。孤立しています。これが全ての基になるものです。
ところで、積乱雲一つ一つのことを生物の細胞に例えて「セル」と呼びます。「対流セル」とか「降水セル」と表現することもあります。
積乱雲が1個の場合は「シングルセル(単一セル)」、複数個集まると「マルチセル」になります。
孤立した1個の積乱雲はシングルセルです。
4.気団性雷雨(右下)
夏に山沿いで発生し、発達しながら平地に向かい、弱まりながら海に抜ける・・よくある夕立ですね。大概は積乱雲1個というより幾つかの積乱雲が発達したり衰弱したりしながら通り過ぎていきます。気団性雷雨の典型例です。もう少し正確に表現すると・・
気団性雷雨とは・・発達段階が違う複数個のセルが雑然と集合しているもの(「一般気象学」を参考)
このタイプでは、ある地域が単一の気団に覆われる状況で発生することで「気団性」と呼ばれます。
複数個のセル(積乱雲)の発生には自己増殖が関係しています。これについては次の「マルチセル型雷雨」と別記事の「自己増殖(世代交代)する積乱雲」で説明しています。
気団性雷雨とマルチセル型雷雨との違いは組織化されているかどうかですが、組織化については改めて取り上げます。
気団性雷雨は資料によってシングルセルに分類されることもあればマルチセルの一種として分類される場合もあります。
5.マルチセル型雷雨(右上)
多数のセルで構成・組織化された巨大雷雨の一つです。
カギとなる特徴は世代交代(自己増殖)です。
一つ一つのセルは発生(誕生)、発達期(子供・青年)、成熟期(親)、衰弱期(祖父母)、消滅(死亡)という順番で一生を全うします。
マルチセル型雷雨では次の流れがあります。
● セルA が発生・発達して成熟期を迎える
● すると近くで新たなセルB が発生・発達する
● セルB が成熟期を迎え、最初のセルA が衰弱する頃には、また近くに新たなセルC が発生・発達する
● このサイクルが繰り返される
親から子、孫へと命を繋いでいくわけです。図では右の小さな白い雲が子供、真ん中の灰色の雲が親、左の薄い色の雲が祖父母になります。
こうやって新たな世代を生み出していくことで、一つ一つの積乱雲の寿命は短くても、全体としては長時間の雷雨をもたらすというのがマルチセル型の巨大雷雨です。
自己増殖の仕組みについては「自己増殖する積乱雲」で分かり易く取り上げています。
6.スーパーセル型雷雨(左上)
これは一つの巨大な積乱雲による巨大雷雨で、アメリカのトルネードの多くはこのタイプの雷雨の時に発生します。一つの雲の塊ながらマルチセル型雷雨並の大きさと寿命があります。
以上ごくごく簡単に解説しました。それぞれのタイプの雷雨が生じる仕組みや特徴等、詳しいことは次回以降に取り上げていきます。