エネルギー観点で大まとめ(傾圧不安定波8)

エネルギーから見た傾圧不安定波と温帯低気圧

ここ何回かに分けて調べてきた、偏西風波動(傾圧不安定波)をエネルギーの観点から見るという作業を一つの表(というか図)にまとめました。

それぞれの欄にある図は既にこれまでの記事に載せたものです。

 ※ 傾圧不安定波 4~7 の記事をご覧ください。

ここに挙げた全体図には1~5の番号を振ってあります。これからこの番号に沿って説明していきます。

1.帯状エネルギー

1-1 帯状運動エネルギー

帯状運動エネルギーを持つ偏西風は蛇行せず緯度線に沿って東に進みます。

1-2 帯状有効位置エネルギー

偏西風を境に南北方向で温度の違う大気が帯状に分布しています。そのため北側の寒気はより大きな有効位置エネルギーを帯状に持つことになります。

でもこの状態はたいてい長続きしません。低緯度側の大気は太陽からの熱エネルギーをたくさんもらって気温が高くなっていくからです。そうなると偏西風の北側と南側の温度差、そして帯状有効位置エネルギーの差が大きくなっていきます。

この状態で何かのきっかけ(ちょっとした気流の乱れ等)で偏西風の流れに乱れ(擾乱)が生じると、そこに渦エネルギーという要素が加わってきます。

2.渦エネルギー

渦エネルギーは偏西風の乱れによって生じたと考えることもできますし、渦エネルギーによって偏西風が蛇行するようになったと考えることもできます。気象現象はそれぞれが複雑に作用し合って起きることが多いからです。

3.傾圧不安定波

帯状エネルギーと渦エネルギーが合体すると偏西風が蛇行し傾圧不安定波(偏西風波動)が現れます。傾圧不安定波の正確な定義は別の記事で取り上げます。

4.渦有効位置エネルギー

傾圧不安定波が現れると偏西風で分けられていた寒気と暖気の壁も波打ち、有効位置エネルギーの分布はまっすぐの帯のような状態から波打った状態に変化します。こうして帯状有効位置エネルギーから渦有効位置エネルギーへの変化が生じます。

5.渦運動エネルギー

上記の位置エネルギーの差を解消しようとして寒気の移動という形で渦有効位置エネルギーから渦運動エネルギーへの変換が起こります。

この運動エネルギーが温帯低気圧を発生・発達させます。

温帯低気圧は渦運動エネルギーを消費していくと、やがて最盛期を過ぎ衰退し始めます。この頃には南北間の温度差も縮まり、もともとの帯状運動エネルギーの状態に戻ります。図でいうと番号1に戻るということです。

このサイクルが続くことで中緯度の熱輸送が行われ続けます。

少し遠回りしましたが、次回からは傾圧大気から始めて傾圧不安定波から温帯低気圧までの流れを順に追っていきます。