台風が暖かい熱帯の海で発生・発達することは何となく分かります。でも、そのメカニズムについて答えよと言われると、ん~ん? となりそうなので、いつもの通り、お絵描き(イメージ図)を使って頭を整理していきます。
これから何回かは台風の発達について特にエネルギーの観点から考えます。これとは別に風速の最大化の観点から考えた次の記事も参考にしてください。
⇒ 「中心付近で風速が最大」
1.熱帯低気圧と台風とは
さて、熱帯低気圧と台風の定義や発生場所などはよくご存じだと思いますが、簡単にまとめると次の通りです。(一部気象庁の定義を参照)
● 熱帯低気圧・・
1) 熱帯または亜熱帯地方に発生する低気圧の総称で、風の弱いものから台風やハリケーンのように強いものまである。
2)気象情報等で「熱帯低気圧」を用いる場合は、台風に満たない、低気圧域内の最大風速がおよそ17m/s未満のものを指す。
● 台風・・
東経100~180度以内の北西太平洋または南シナ海に存在する熱帯低気圧のうち、低気圧域内の最大風速がおよそ17m/s以上のもの。
● 台風の主な発生場所・・
海面温度が27℃以上の北緯10~25度の太平洋、南シナ海など。特に熱帯収束帯周辺。
海面温度については資料によって26.5℃以上だったり26~27℃だったりしますが、まあ、そんなところです。
2.熱帯収束帯
熱帯収束帯(ITCZ)とは分かり易く言うと、北東貿易風と南東貿易風がぶつかり合うところです。
この衛星画像は2019年8月6日に台風8号が九州に上陸した日のものです。
水色の矢印が北東貿易風と南東貿易風です。南東貿易風は赤道(赤い線)を超えて北半球側に入り込んでいます。
そして両者がぶつかる熱帯収束帯の一般的な位置を黄色の線で示しています。
この画像の台湾の南東海上にあるのが台風9号、その東に熱帯低気圧があります。
3.イメージ図の説明
今度はイメージ図から解説します。この図は左側の①と右側の②に分かれています。時間の流れを数字で示しています。
さらにそれぞれを上段、中断、下段に分けています。
● 上段・・ 衛星画像
白い塊は衛星画像に映る雲をイメージしたものです。海域は熱帯収束帯です。この海域で多くの熱帯低気圧が発生します。
● 中段・・ 雲を横から見た鉛直断面図です。
● 下段・・ 地上天気図です。
3.積乱雲の発生(図の左側①)
ただでさえ熱帯の暖かい海域は多量の水蒸気があるため雲ができやすい場所です。そこへ北と南から風がぶつかり合うと行き場を失った風は上昇気流となって積乱雲を作ります(中段)。
雷雨のところで扱いましたが、積乱雲の内部では水蒸気の凝結に伴って潜熱の1種である凝結熱が放出され、周囲の空気を温めます(図の赤丸で示しています)。
4.クラウドクラスター(図の右側②)
水温が高い海域で、なんらかの要因で積乱雲が集まってくると一つの雲の塊(クラウドクラスター)になります(上段)。
先ほどの衛星画像でも台風や熱帯低気圧の周りに白い雲の塊(クラウドクラスター)らしきものが見えます。
クラウドクラスターの下では強い上昇気流があるので(中段)、気圧がやや低くなっています。これを低圧部と言います(下段)。
では、この先熱帯低気圧、さらに台風はどのようにして姿を現すのでしょうか?それは次回のお楽しみ 😉