積乱雲も一人ぼっちだと淋しいようで家族を作ったりします。どのように子供や孫を持つのか、それが今回のテーマです。
1.メソハイ
前々回と前回の記事で取り上げたように、成熟した積乱雲には上昇気流と下降気流、両方が見られます。
下降気流と言えば高気圧が思い浮かびますが、積乱雲からの下降気流も一種の高気圧を作り出します。これをメソハイ(雷雨性高気圧)と呼びます。
2.ガストフロント
メソハイの下では上空の冷気が地表めがけて勢いよく下降して来ます。
地表にぶつかった冷気は周囲に水平発散します。この発散風の先頭をガストフロント(突風前線)と言います。時にガストフロントで竜巻が発生することもあります。
3.ダウンバースト
この発散風は時に非常に強い突風となります。とりわけ強い下降気流の突風をダウンバーストと言い、航空機事故につながることもあります。
ダウンバーストが地表に達し放射状に広がると竜巻の時のような激しい突風となり電柱をなぎ倒したりと大きな被害をもたらします。竜巻と違うのは竜巻が上昇気流なのに対しダウンバーストは下降気流だということです。
4.自己増殖
ガストフロントはガストフロントの内側の冷気と外側の暖気を分ける小さな寒冷前線のような役割を果たします。
冷たいガストフロントが暖気の下に潜り込もうとすると、暖気は強制的に上昇させられます。そのためガストフロント上で新たな雲が発生することがよくあります。言わばもともとの積乱雲から子供となる新たな雲が誕生するわけです。
親の積乱雲は次第に上昇気流より下降気流の方が主になり、次第に衰えていきます。それに対し、子供の雲は成長していって若い積乱雲、さらに成熟した積乱雲へと変わっていきます。
こうして積乱雲の命は親から子へ、やがて子から孫へと繋がれていきます。これが降水セル(積乱雲)の自己増殖、または世代交代というものです。
自己増殖の仕組みについては「雷雨の種類」の記事のマルチセル型雷雨のところでも説明させていただいてます。
5.片親?両親?
積乱雲が子供を持つ仕組みはガストフロントによるものですが、子供のできかたには二つのタイプがあります。それを示すのがこのイメージ図です。
図の上のタイプは先ほど述べた普通の自己増殖のイメージです。
図の下のタイプは二つの積乱雲(両親のようなもの)からのガストフロントに挟まれた領域の暖気が、行き場がなく上昇して新たな雲を発生させるという仕組みのものです。
もっとも、実際の雷雨はこれらのタイプが混在している場合が多いでしょう。
6.気団性雷雨
自己増殖する雷雲のタイプでよく見られるのは、気団性雷雨です。
気団性雷雨については、「雷雨の種類」の記事で挙げた3つ(孤立した単一の積乱雲によるものも含めると4つ)のうちの一つです。
図の黄色で囲んだものです。
復習しますと、
気団性雷雨とは・・発達段階が違う複数個のセルが雑然と集合しているもの(「一般気象学」を参考)
別の資料の説明では下記の通りです。
『ある積乱雲から「子」や「孫」の積乱雲が近辺に発生し、成長期、成熟期、減衰気の積乱雲が混ざった集団となったものを気団性雷雨といいます。』(「図解気象学入門」)
7.組織的か
気団性雷雨ではあちこちで新しい積乱雲が生まれたり消滅したりしていますが、その生成はバラバラで組織的ではありません。
一方、組織的に世代交代(自己増殖)するタイプの雷雨もあって、それがマルチセル型雷雨です。ということで次回はマルチセル型雷雨を取り上げます。ではまた