断熱膨張すると温度が低下する、いまいちピンと来ないですね。今回はその理屈を感覚的に捉えられるようバントとクッションの例えで考えてみます。
1.遠ざかる壁
気体の温度というのは気体分子の熱運動の激しさです。
ということは断熱膨張することで分子の運動が弱くなれば温度が下がると推論できます。
その理屈を上記のイメージ図で表現しました。ひとつひとつを順を追って説明します。
1-1. 膨張前の気塊
青の丸は気体分子です。
Aは気塊の境界つまり壁と考えます。
気体に壁はありませんが、分かり易いようにイメージしてみます。
気体分子は壁Aに向かって勢いよく飛んで行ってぶつかって跳ね返ります。
1-2. 膨張後の気塊
壁が移動している最中に空気分子が壁にぶつかったならどうなるでしょう。
止まった壁にぶつかるより遠ざかっている壁にぶつかる方が跳ね返りの勢いは小さくなります。(矢印が短くなっていますね)
言い換えれば分子の運動速度が小さくなったわけです。
前述のように実際の気塊にこうした壁はありませんが、気塊の外側の部分が中心から遠ざかっていくと、その部分が壁の役割をして、それより内側の空気分子の運動を弱め温度が下がっていきます。
まとめると一番上の図となります。
1-3. バットを引いてバントする
この理屈の説明はよくバットでボールをバントすることで例えられていますね。
バットを少し引きながらボールに当てると跳ね返るボールの勢いを弱めてボールがあまり飛ばないようにしますね。あれと同じです。
2.クッションではボールは跳ね返らない
今度はクッションとボールに例えます。
子供の頃、スーパーボールというのがありましたが、勢い良くバウンドして面白かったです。(スーパーボールって何?という方・・気にしないでください。普通のボールでいいです)
2-1. 床がフローリング
ボールを床に勢いよく投げ落としたとします。床がフローリングならボールは勢いよくAの大きさで跳ね返ります。
2-2. 床がクッション
一方、床に柔らかいクッションを置き、そこにボールを勢いよく投げ落としたとします。この場合、ボールの勢いは弱められてBの大きさでしか跳ね返ることができません。
でも、クッションがあるとなぜボールがあまり跳ね返らないのでしょう?これは運動するボールの力の一部がクッションをへこませる力として吸収されるからではないでしょうか。
同じようにある気体の塊(気塊)が膨張する時、その気塊の空気分子(ボール)は自らの運動エネルギー(赤い矢印)の一部を周りの空気(クッション)を押し返すこと(黄色い矢印)に使います。
その分、空気分子の持つ運動エネルギー(つまり熱エネルギー)は低下し温度が下がるという説明になります。
3.膨張と温度低下・・どちらが先?
バットとボールの例えでは、空気の膨張があって、その結果空気分子の勢いが弱まるという理屈でした。
一方、ボールとクッションの例えでは、空気分子の動きにより空気の膨張するという理屈になります。
でも、実際はどちらが先ということではないでしょうね。