相対渦度の式と発散・収束の式はよく似ています。いつもの通り、簡単なイメージ図から始めて渦度を求める式につなげていきます。
1.簡単な計算方法
「簡単な計算方法」のイメージ図をご覧ください。正方形は地点Pを中心とする平面上の一つの領域と考えます。
この領域の上側が北、右側を東とします。
矢印は正方形の4つの側面と東西軸・南北軸の交点で吹いている風の強さと向きを示しています。数字は風速です。
では、Pの周囲で風はどのような渦を巻いて吹いているでしょうか?
渦度は反時計回りを正、時計回りを負としています。
図を見ると反時計回りに沿うように吹いている風と反時計回りに逆らう(つまり時計回りの)ように吹いている風があります。
それで、反時計回りの風の値から時計回りの風の値を引けば渦度を知ることができます。
この場合、値がプラスなら正渦度、マイナスなら負渦度になります。
図では渦度がー5なので、大きさが5の負渦度(時計回り)という計算結果になっています。
2.簡略化した渦度の求め方
ここからは、渦度の式につながる段階的な考え方を進めていきます。下の「簡略図」を見てください。さらにその下に載せた図は「簡略図」と「簡単な計算方法」の図を合体させたものです。
さきほどと同じようにPを取り巻く正方形の側面上の4つの地点に吹く風があるとします。
この図での矢印は南風成分と西風成分を示しています。
南風成分では南風を正、北風を負とします。西風成分では西風を正、東風を負とします。
発散・収束の式と同じように、まず南風成分の差と西風成分の差を出します。
発散・収束のときの図との違いが分かると思います。発散・収束では風は正方形の領域の側面に垂直に出入りする風を扱いました。渦度では正方形の領域の側面に沿う角度で吹く風を扱います。
南風成分の差を求めるには x軸の大きい方で吹く風の値から、x軸の小さい方で吹く風の値を引きます。
西風成分の差を求めるには y軸の大きい方で吹く風の値から、y軸の小さい方で吹く風の値を引きます。
南風成分の差と西風成分の差が出たら、南風成分の差から西風成分の差を引きます。
この結果がプラスなら正渦度(反時計回り)、マイナスなら負渦度(時計回り)になります。
3.渦度の式
ここまでは感覚的に渦度を求める方法を考えてきました。いきなり本題に入りますが、渦度を数学的に求めるために次の座標軸を用います。
簡略化した図と違うのは四角の領域の幅(距離)を要素に入れたことです。
Pを中心に置く四角の領域があるとします。
◎ 南風成分の差 Δv=v2-v1
◎ 西風成分の差 Δu=u2-u1
◎ 東西の距離 Δx
◎ 南北の距離 Δy
なお、ここでいう渦度は相対渦度です。また鉛直成分の渦度を表す記号をζ(ゼータ)とすると、次の式が成り立ちます。
$\color{blue}ζ[s^{-1}]=\large{\frac{Δv}{Δx}-\frac{Δu}{Δy}}$
この式を言葉で表現すると、こうなります。
$\color{blue}渦度=\Large{\frac{南風成分の差}{東西距離} – \frac{西風成分の差}{南北距離}}$
式の成り立ちは省略しましたが、渦度の式と発散・収束の式の違いをはっきり覚えていればどんな問題が出題されても怖くはありません(だといいですね)。