前回の記事でさらっと触れた暖かい雨と冷たい雨とは何でしょうか?その2つでは降水までのプロセスが異なります。暖かい雨の方が単純で分かりやすいので、まずは暖かい雨の仕組みを考えます。
1.暖かい雨と冷たい雨とは
雲の中の温度がどこも0℃以上で水滴だけで作られている雲を暖かい雲といいます。そして暖かい雲から降る雨を暖かい雨といいます。
一方、雲の中の温度が0℃より低いところがあり、氷晶という凍った雲粒があるような雲を冷たい雲といいます。そして冷たい雲から降る雨を冷たい雨といいます。
では上のイメージ図を基に暖かい雨についての概要を紹介します。それぞれの詳しい内容は次回以降に順次取り上げていきます。
2.雲
全体を囲む、もわっとした黒い枠を雲とします。
ここでは海面から水蒸気が上る設定にしてあります。実際、暖かい雨は熱帯の海で発生することが多く、スコールがその代表です。
左下の水蒸気から雲ができて右下の雨までを順に説明します。
3.未飽和
左下の四角は水蒸気を含む空気塊で5つ分の水蒸気(白丸)を含んでいます(以下丸など図形は粒子とその量をイメージしたものとします)。まだ気温が高いので、さらに3つ分の水蒸気を含む余裕(点線の丸)があります。何らかの理由で空気塊が上昇していきます。
4.飽和
空気塊は冷えて飽和になります。さらに冷えると水蒸気が凝結して水滴が発生するはずです。
5.過飽和
ところが現実には、飽和の状態からさらに気温が下がっても凝結しません。この状態が過飽和です。
イメージとしては席が空いてないので立ち見をしている客がいる感じです。図では余った水蒸気1個を青枠の丸で表しました。
6.水滴の生成(エアロゾルがない場合)
定員オーバーで落ち着かない水蒸気幾つかが偶然衝突して小さな水滴ができます。それが左側の青い丸です。
7.表面張力
水には表面張力という性質があります。表面張力は水滴が小さいほど強く働きます。ここでできた水滴はとても小さいので表面張力(黒枠)が強く、安定して存在することができません。それで、やがて蒸発し消滅してしまいます。
8.エアロゾル
雲の発生にはエアロゾルという大気中の微粒子が不可欠です。エアロゾルについては前回の記事でも少し触れました。
エアロゾルの中でも海の水しぶきによってできる海塩粒子は暖かい雨を降らせる雲を生じさせます。図では黒枠の正方形で表しています。
9.水滴の生成(エアロゾルがある場合)
エアロゾルがあると過飽和状態(時には飽和状態)の水蒸気がエアロゾルにくっついて水滴ができあがります。
エアロゾルはある程度の大きさがあるので、このときの水滴はエアロゾルがない場合にできる水滴より大きくなります。(図ではうまく表現できていませんが大きいです)
そのため表面張力は弱く安定して存在することができます。
10.雲粒の生成
できたばかりの水滴に、さらに周囲の水蒸気がくっついて凝結することで成長します。ある程度の大きさになると雲粒になります。
11.凝結過程(拡散過程)
雲粒はさらに周囲の水蒸気の凝結によって大きくなっていきます。
このように、水蒸気が水滴にくっついて凝結することにより水滴が大きくなっていく過程を凝結過程(または拡散過程)といいます。でも凝結過程だけでは雲粒は雨粒まで大きくなることはありません。
12.併合過程
ある程度大きくなった雲粒は落下していきます。
雲粒の中には比較的大きいものもあれば小さいものもあります。雲粒は大きいほど落下速度が速くなります。
大きな雲粒が速いスピードで落下していき、下にある小さな雲粒が遅いスピードで落下していくとどうなるでしょうか?
大きな雲粒は小さな雲粒に追いついて飲み込んでしまいます。こうして大きな雲粒はさらに大きくなりスピードは増し、加速度的に成長します。これを併合過程といいます。
13.雨粒の生成
雲粒はやがて雨粒の大きさにまで成長して地表へと降り注ぎます。
以上が暖かい雨の降る仕組みの概要です。
次回から一つ一つの項目に焦点を当てて調べていきます。