進路は合格、強さは外れ。
最近の気象庁の台風予想はかなり進歩しているようですね。台風が発生した時点で発表する進路予想はかなり正確です。
南関東に記録的な暴風をもたらした2019年台風15号についても、発生して間もない、まだ暴風雨圏もない頃から関東から東海に接近することを予想していました。
台風が近づくに連れ、その予想はさらに絞られていき、実際ほとんどその通りの進路を進みました。
1.予想を超えた発達
ただ、15号の勢力については予想外だったようです(よね)。
この図は台風15号の実際の進路図を示したものです。
この図に発生当初 予想されていた中心気圧(青)と実際の中心気圧(赤)を書き加えて比較してみました。(この記事を書いている時点での暫定値です。以下同様。)
進路については大きな違いがなかったので省略しました。
これだけでも当初の予想よりかなり勢力が強くなったことが分かります。
ただ、この予想というのはもちろん気象庁の予想です。TBSテレビ「ひるおび」(9月6日放送)の中で気象予報士の森朗さんは、台風の進路上の海面水温が高い(平年より1~2℃高い)ことを上げ、実際にはもう少し発達するんじゃないか、と言っていました。当然、お上(気象庁)に逆らって断言することは避けていましたが。
2.上陸直前が最盛期?
さらに詳しく見ると、上陸前の気圧の変化はとても興味深いものがあります。
関東に近づいて来ると、中心気圧は少し上がって965hPa になります。
それ以前の予想では、台風は勢力を落とさずに接近するとありました。でもやはり、若干衰えるんだろうとその時は思いました。
ところが、伊豆諸島の神津島付近で955hPa にまでなり、そのままの強さで三浦半島に接近・通過しました。これは意外でした。
3.中心気圧低下の訳
この点についてTBSテレビ「ひるおび」(9月9日放送)の中で気象予報士の森朗さんは、次の2つの理由のどちらかだろうと説明していました。
◆ 実際に発達した
衛星画像で見ると、確かに15号は関東の南に接近するにつれて目が次第にはっきりしてきています。
また、日本の南海上の海面水温は28℃以上あったので発達してもおかしくありません。陸地に接するところでも27℃はありました。
◆ もとから955hPa だった
海上では台風についての正確なデータは十分ではないので、陸地に近づいて初めて正確な気圧などが判明します。
4.東京湾から力をもらう
高い海面水温は外海だけでなく東京湾内でも同じで28℃ありました。
そして中心が東京湾のど真ん中を進んだため、強い勢力を維持したまま千葉に上陸し、危険半円に入った千葉県で大きな暴風被害をもたらしました。
5.勢力の特徴
● 勢力が予想以上に強くなった
● 上陸地点に近い海上で最盛期を迎えた
● 東京湾に入っても ほぼ勢力を維持した
これらは皆、高い海面水温が関係しています。
ちなみに勢力が予想以上に強くなったという点では、今年(2019年)は他の台風にも当てはまります。例えば、発生当時に予想した最盛期の中心気圧と実際の気圧とを比べると・・
◎ 9号・・ 予想 950hPa ⇒ 実際 925hPa
◎ 13号・・ 予想 975hPa ⇒ 実際 940hPa
◎ 15号・・ 予想 975hPa ⇒ 実際 955hPa
スーパーコンピューターも予想を外したのでしょうか?
6.若い台風
気象学のテキストにあるような「正統派」の台風がそのまま日本、特に関東に上陸することは少ないのですが、今回の15号は形、風、雨、目、どれを取っても台風らしい台風でした。
これは、15号が若いまま関東にやって来たからと言えるでしょう。そして、台風が若いのは海の温度が高いこと、それはおそらく地球温暖化によるものでしょう。
日本列島の近くで転向点を迎える台風が増えている、増えつつあるという話もよく聞きます。
昨年(2018年)の台風21号、今回(2019年)の台風15号、いずれもめったに経験しない暴風を引き起こしました。若い台風の襲来をこれからも警戒する必要がありますね。