アジアモンスーンの兄弟がプラネタリー波ならば、海陸風はモンスーンの孫みたいなものです。
風向きが一定のサイクルで正反対になるという性格、「陸と海の熱容量(比熱)の差」という同じ遺伝子を受け継いでいること。スケールは違えどよく似ています。
大規模な大気運動とは外れますが、ちょっと寄り道です。では一つずつ説明していきます。図も参考にしてください。
1.陸と海の熱容量(比熱)の差とは
● 熱容量とは・・
物質の温度を1℃上げるのに要する熱量
● 比熱とは・・
1gの物質の温度を1℃上げるのに要する熱量
● 海は陸より熱容量(比熱)が大きい
温度を1℃上げるには海の方が陸地と比べてより多くのエネルギーを必要とします。
ということは太陽からの同じ量の放射を受けた場合、海は陸地ほど温度が上がらないと言えます。
別の表現をすれば陸地は暖まりやすく冷えやすい、海は暖まりにくく冷えにくいということです。
感情の起伏が激しいのが陸地、沈着冷静なのが海、ですね。
2.モンスーンの場合(図の左側)
2-1 夏
● 夏は太陽高度が高く日射量が多くなります。
● 大陸は海洋に比べて熱容量が小さいので、太陽放射を受けて地表面はすぐに暖まり気温がどんどん上昇していきます。
● そのため海洋に比べて空気密度が小さくなり、空気は上昇し低気圧となります。
● 逆に海洋は大陸ほど気温が上がらないので相対的に空気密度は大きく高気圧となります。
● 結果として気圧の高い海洋から気圧の低い大陸へと風が吹きます。
2-2 冬
● 太陽の高度が下がり日射量は少なくなります。
● 海洋はすぐに冷えないので相対的に暖かく低気圧となります。
● 大陸は放射冷却によってどんどん気温が下がり高気圧となります。
● よって気圧の高い大陸から気圧の低い海洋へと風が吹きます。
このようにして季節によって風向きが正反対になるモンスーン(季節風)が生じます。
3.海陸風の場合(図の右側)
海陸風(かいりくふう)のメカニズムはモンスーンと同じです。
モンスーンのスケールをずっと小さくして 夏と冬 を 昼と夜 に置き換えれば分かり易いですね。
3-1 日中
陸上の方が海上より暖まりやすく、風は海から陸に向かって吹きます。これが海風(うみかぜ)です。
3-2 夜間
陸地は冷えやすいので陸地から海上へと風が吹きます。これが陸風(りくふう)です。
海陸風と一緒に取り上げられることが多いのが山谷風(やまたにかぜ)です。山谷風も昼と夜とで風向きが反対になる風です。山谷風については別の機会に・・
以上の内容を表で表しました。
それにしても「風」は「ふう」と呼んだり「かぜ」と言ったり ややこし...