これまで亜熱帯ジェット気流の成り立ちと寒帯前線ジェット気流の成り立ちについて取り上げてきました。
ところで、どちらのジェット気流も季節によって強さや位置が変わります。それが今回のテーマです。
なお、この記事で挙げる緯度の数値は厳密なものではありません。資料・地域・年や日によって緯度は変わります。
特に寒帯前線ジェット気流の位置(緯度)の数値は本、ネット、AIによる情報がバラバラです。ですから、この記事に出てくる数値は、あくまで目安と捉えてください。
重要なのは数値ではなく傾向です。以下、北半球を前提とします。
模式図「ジェット気流の季節変化」をご覧ください。これは北極上空から地球を見た図です。図ではジェット気流を円として描いていますが、実際には多かれ少なかれ蛇行しています。

目次
1.理論的な位置
教科書的な位置ともいえます。図にはありませんが下記の通りです。
◆ 寒帯前線ジェット気流 ▷ 北緯60°付近
◆ 亜熱帯ジェット気流 ▷ 北緯30°付近
これらの数値は、地表は全て海であるとの仮定に基くもので、平均的な大気の大循環の境界と一致しています。
2.季節による位置の変化
青い円 ▷ 寒帯前線ジェット気流<Jp>
赤い円 ▷ 亜熱帯ジェット気流<Js>
2-1. 寒帯前線ジェット気流
寒帯前線ジェット気流は大きく蛇行するので数値より傾向に注目してください。
◆ 春と秋(図の下部) 北緯40°~55°
◆ 冬(図の左上部) 北緯30°~40° まで南下
◆ 夏(図の右上部) 北緯50°~70° まで北上
寒帯前線ジェット気流は冬から夏にかけて40→50→60 と北上し、夏から冬にかけては60→50→40 と南下する とすると覚えやすいでしょう。
または、もう少し幅を持たせて、冬から夏にかけて30→50→70と北上し、夏から冬にかけては70→50→30と南下すると覚えることもできます。
2-2. 亜熱帯ジェット気流
亜熱帯ジェット気流は寒帯前線ジェット気流より蛇行が小さく、季節変化も小さいです。
◆ 春と秋(図の下部) 北緯30°
◆ 冬(図の左上部) 北緯25°~30° (やや南下)
◆ 夏(図の右上部) 北緯40°付近(不明瞭)(北上)
亜熱帯ジェット気流は北緯30° と覚えておけばいいと思います。夏は北上しながら不明瞭になるので、括弧付きで北緯40°としています。
3.季節による強さの変化
2つのジェット気流とも南下すると強くなり、北上すると弱くなります。位置と強さを川柳風に表すと…
『ジェット気流 冬は南下で 強くなる』

4.季節による位置の変化の成因
4-1. 根本的な成因
地球は地軸が傾いた状態で公転しています。北半球が夏のとき、北半球全体が太陽からのエネルギーをより強く、より多く受け取り、全体が暖かくなります。
このため、大気の大循環(ハドレー循環、フェレル循環、極循環)が北側にシフトします。その結果、各循環の境に位置するジェット気流も北上します。
北半球が冬のときはその逆で、大気の大循環が南側にシフトし、ジェット気流も南下します。
まとめると、位置の変化の根本的な成因は・・
≪大気の大循環のシフト≫ といえます。
参考までに、南半球では冬(北半球の夏)は大気の循環が北側にシフト、夏(北半球の冬)は南側にシフトします。
ここから、上記の理由に加えて、2つのジェット気流ごとの成因を詳しく説明していきます。
4-2. 寒帯前線ジェット気流
寒帯前線ジェット気流を生み出す原動力は南北の温度差です。ここを念頭に置くと以下の変化が理解できます。
◆ 冬
冬は北半球全体で太陽高度が低くなり、受け取る太陽エネルギーが少なくなります。
そのため、全体として気温が低下しますが、特に北極周辺では一日中太陽の光が当たらないため(極夜)、気温の低下が大きくなります。
すると強い寒気とともに寒帯前線帯が南側に大きく南下し、寒帯前線帯上空にある寒帯前線ジェット気流も大きく南下します。
◆ 夏
夏は北半球全体で太陽高度が高くなり、受け取る太陽エネルギーが多くなります。
そのため、全体として気温が上昇しますが、特に北極周辺は一日中太陽の光が当たるので(白夜)、気温の上昇が大きくなります。赤道付近ももともと暑い空気に覆われています。
すると、高緯度において南北の温度差が小さくなり、寒帯前線帯が北上し、寒帯前線帯上空にある寒帯前線ジェット気流も北上します。
◆ 春と秋
太陽高度は夏と冬の中間になるので、寒帯前線ジェット気流の位置も夏と冬の中間あたりになります。
4-3. 亜熱帯ジェット気流
亜熱帯ジェット気流についても、南北の温度差の変化によって冬から夏にかけて北上し、夏から冬にかけて南下します。
◆ 夏以外
亜熱帯ジェット気流は夏を除けば、寒帯前線ジェット気流に比べて位置の変化は大きくありません。理由は2つあると思います。
◇ 亜熱帯ジェット気流の主な成因はハドレー循環にある
ハドレー循環では上空で北に向かう風がコリオリ力で右に曲げられ西風となります。
また、角運動量保存則によってこの西風が非常に強くなり亜熱帯ジェット気流となります。
コリオリ力も角運動量保存則も地球の自転の影響によるもので季節とは関係がありません。
ですから、亜熱帯ジェット気流は北緯30°付近で力学的限界に達し、それ以上北には移動できないということです。
亜熱帯ジェット気流の成り立ちは「亜熱帯ジェット気流とハドレー循環の成因」をご覧ください。
◇ 低緯度では南北方向の温度差はあまり大きくない
亜熱帯ジェット気流の成立には、寒帯前線ジェット気流ほどではありませんが、南北の温度差もある程度関係しています。
赤道付近は1年を通じて太陽高度が高く暑いので、季節による南北方向の温度差は高緯度・中緯度ほど大きくありません。
そのため、季節による移動も大きくありません。
◆ 夏
幾つかの資料によると夏になると亜熱帯ジェット気流は北緯40°以北まで移動すると説明されています。
梅雨の時期に日本列島に沿うように位置していた亜熱帯ジェット気流が北上して梅雨が明けることから、そう考えるのが自然です。
一方、亜熱帯ジェット気流は(先ほどの力学的限界を考慮してかもしれませんが)北緯30°付近から遠く離れることはないと説明している資料があります。
これは解釈が難しいと思いますが、北上するとともに弱まり不明瞭になるので、明確な位置を特定するのが難しいのかもしれません。
5.季節による強さの変化の成因
ジェット気流の強さを決めるのは南北方向の温度差、つまり水平温度傾度です。下記の記事を参照してください。
▷ 「水平温度傾度と鉛直速度傾度(温度風の関係をちょっと詳しく2)」
◆ 冬
冬は寒帯前線ジェット気流が大きく南下するのに対し、亜熱帯ジェット気流はあまり移動しません。
言い換えると、寒気は大きく南下するのに、北緯30°付近までの暖かい空気の範囲はあまり変わりません。
そのため、北緯30°~40°付近にかけては南北の温度差が非常に大きくなります。
それにより、寒帯前線帯も亜熱帯前線帯(ハドレー循環とフェレル循環の境)も水平温度傾度がより大きくなります。
こうして2つのジェット気流は接近し、どちらも強さを増すことになります。
◆ 夏
夏は北半球全体が暖まるので、温度差が小さくなり、2つのジェット気流はともに弱くなります。
◆ 春と秋
南北の温度差は中程度になり、2つのジェット気流の強さも中程度となります。
6.まとめ
◇ 寒帯前線ジェット気流
北緯30°(冬)~70°(夏) 冬は南下して強まる
◇ 亜熱帯ジェット気流
北緯30° 夏は北上して弱まる
再びですが、まとめると・・『ジェット気流 冬は南下で 強くなる』
以上が北半球全体におけるジェット気流の季節変化です。
日本付近に限ってみると、また独特の特徴があって面白いです。次回、取り上げますね。
