これまで傾圧大気を等密度面や等温面との関係で考察してきました。今回は等温位面との関係を考察します。といっても傾圧大気の定義には温位のことは(私の知る限り)触れられていないので、定義ではなく関係性を考えていきます。
等温位面というと馴染みがないかもしれません。でも、第60回一般知識問8で等圧面、等温位面、地衡風の風向・風速の関係を問う問題が出ました。
この記事でそれらの関係性を実際の中緯度傾圧大気を念頭に調べていきます。
1.中緯度傾圧大気における等温位面の走向
模式図をご覧ください。(※)図の見方は「傾圧大気の定義と等温面の関係」を参考にしてください。この図では温位が高いほど暖色系、低いほど寒色系になるよう描いています。対流圏における温位には次の性質があります。
※「一般気象学 第2版補訂版 東京大学出版会 小倉義光著」の図7.19、7.20 を参考に作図しました。

◆ 水平方向 ⇒ (同じ気圧であれば)温度が高いほど高くなる
◆ 鉛直方向 ⇒ (安定した大気であれば)高度とともに上昇する
以上を踏まえた上で模式図を見てみます。
◇ 南北方向 ⇒ 南ほど温位は高い
◇ 鉛直方向 ⇒ 高度が高いほど温位は高い
そのため、一般的に中緯度の傾圧大気では南側の上層で最も温位が高く、北側の地表付近で最も温位が低くなっています。
図にあるように等温位面の高度は北から南へと低くなっています。逆に等圧面の高度は南から北へと低くなっているので、等温位面と等圧面は交わることになります。
それに対し、低緯度と高緯度ではほぼ順圧大気であり、上層ほど温位が高くなっていますが南北方向には温位の変化はほとんどありません。そのため、等圧面も等温位面も傾斜しておらず両者が交わることは少ないです。
2.等温位面の実際の分布
次の図は実際に観測された平均温位の分布図を基に作成したものです。(※)数字も入れてありますが、あくまでイメージとしてとらえてください。
※一般気象学 第2版補訂版 小倉義光著 東京大学出版会」の図3.6を参考に作図

図では温位が高い温位面を暖色系の線、低い温位面を寒色系の線で表しています。
この図から分かるのは上層の北緯25°付近から下層の北緯50°付近にかけて温位の分布に大きな変化があるということです。(オレンジ色で囲まれた部分)
具体的には、中緯度において等温位面が北から南へと大きく高度を下げて傾斜しており、低緯度と高緯度では傾斜はほとんどないということで、最初の模式図の通りであることが分かります。
3.傾圧大気における等圧面、等温位面、地衡風の風向・風速
第60回一般知識問8では5つの鉛直断面図から上記の関係が正しいものを選ぶ問題となっています。北半球における標準的な(典型的な)状態から上記の関係を確認します。
模式図をご覧ください。この図は問8に出ている図(a)を参考にしたものですが、最初に挙げた模式図「傾圧大気と等温位面」を簡略化したような図になっています。
左側は鉛直断面図で青い円が大きいほど風速が大きいことを示しています。右側は平面図で矢印で表された地衡風(偏西風)は高度または気圧が高い方を右手に見て吹いています。

この図の意味を簡潔に示すと次のようになります。
1. 等圧面と地衡風
▷ 等圧面の高度は北に向かって下がっている(南ほど気圧が高い)
▷ 地衡風は気圧の高い方を右手に見て吹くので西風となる
▷ 気圧傾度が大きいほど風が強くなるので、上層の方が風が強い
2. 層厚と等温位面
▷ 層厚は北に向かって小さくなっている
▷ 層厚と平均温度は比例するので南ほど平均温度が高い
▷ 等圧面において温度と温位は比例するので、等圧面では南ほど温位が高い
▷ 等温位面の高度は北から南に向かって下がっている
※ 温位は高度が上がると高くなり、温度は高度が上がると低くなるので、等温位面の傾きと等温面の傾きは逆になる
以上のことから上記の図は北半球の中緯度の典型的な傾圧大気の状態を描いたものと理解できます。
試験問題には典型的でない大気の状態を描いたものが4つ挙げられていて、その正誤を問うものとなっています。例えば北に向かって等圧面の高度が高くなっていたり、地衡風が東風になっていたりします。
典型的でないものはみんな誤にしたいですが、等圧面、等温位面、地衡風の関係の整合性が取れていれば、それは正となるわけです。
4.南北鉛直断面図の整合性を判断する方法
等圧面、等温位面、地衡風の風向・風速の関係を踏まえ、南北鉛直断面図の整合性を判断する方法をまとめると以下になります。
▶ 等圧面の走向から地衡風の向きと強さを判断する
▶ 層厚から平均温度を判断する
▶ 平均温度から温位を判断する
▶ 等温位面の走向を判断する
以上となります。ここまでの一連の記事で傾圧大気について詳しく調べましたが、中緯度傾圧大気は偏西風と寒帯前線ジェット気流の生成に関わってきます。近々記事にする予定です。
