傾圧大気について知ることは偏西風を理解するために欠かせません。でも、傾圧大気が何を意味するのか、資料によって表現がまちまちです。結局なんなのか今回まとめてみました。
また、傾圧大気などの説明や模式図に等密度面、等温面、等温位面なるものが出てきますが、それぞれの意味を複数回に分けて説明します。
正確な意味が分かれば試験に突然これらの用語が出てきても慌てないでしょう。
1.傾圧大気とは何か?
▶ 定義(密度)・・等圧面と等密度面が交わる大気
▶ 定義(温度)・・等圧面と等温面が交わる大気
▶ 風に着目した説明・・風速が高度とともに増大している大気
▶ 傾圧大気か判断する方法・・等圧面上に等温線が引ければ傾圧大気
▶ 等温位面・・中緯度で南北方向の傾度が大きい
では、ひとつずつ考えていきます。今回は等密度面についてです。等密度面は馴染みがないかもしれませんね。お急ぎの方は以下の説明は飛ばして、次回の「傾圧大気の定義と等温面の関係」を読んでもいいかもしれません。
2.模式図の説明
模式図「傾圧大気と等密度面」をご覧ください。「一般気象学 第2版補訂版 (東京大学出版会)」の図7.19と図7.20を参考に作成しました。
図の下側から説明します。縦が高度、横が緯度、下端が最下層(地上)、上端が最上層です。図の中の実線が等圧面、破線が等密度面です。
この図では、暖色(赤)から寒色(青)に向かって密度が大きくなることとしています。
図では低緯度、中緯度、高緯度とありますが、それぞれの意味については「偏西風の吹く範囲はどこ?」をご覧ください。
3.大気の密度を決める要素
◇ 高度・・高度の上昇(正確には気圧の低下)とともに密度は小さくなります。これは感覚的に分かりますね。高い山の上では空気が薄いです。
◇ 温度・・温度の上昇とともに密度は小さくなります。温度が上がると空気が膨張するからです。
4.順圧大気
まず、低緯度と高緯度に着目してください。低緯度と高緯度では等圧面と等密度面は交差していません。このように等圧面と等密度面が平行している大気を順圧大気といいます。
描いた色にも注目してください。低緯度では下層から上層に向かって暖色が濃くなり、高緯度では下層から上層に向かって寒色が薄くなっています。
これは低緯度と高緯度では高度とともに密度が小さくなっていくことを表しています。そして低下の度合いには緯度による違いがありません。
つまり、鉛直方向には密度の違いはあるけれど水平方向には密度の違いはないということです。
同様に気圧も高度とともに下がっていきますが、やはり低下の度合いには緯度による違いはありません。
このように順圧大気では等圧面も等密度面も傾きがないので、2つの面が交わることはありません。
低緯度と高緯度が順圧大気になる理由は直接循環(ハドレー循環と極循環)によって空気がかき混ぜられ、南北の温度差が小さくなるからです。温度差が小さくなると密度の差も小さくなります。
実際には低緯度、高緯度とも全くの順圧大気というわけではなく、ほぼ順圧大気という方が正確です。

5.傾圧大気
中緯度の大気は傾圧大気です。傾圧大気になる理由は南北の温度差が大きいからです。大きな温度差は気圧と密度に下記のような影響を及ぼします。
◇ 等圧面
温度が高くなると層厚が厚くなります。すると高度が上がるに連れ南北の気圧傾度は大きくなります。このあたりの仕組みは「層厚(そして温度風の関係)」を参照してください。
図では、等圧面を示す実線が南から北に向かって下がっていることと、上空ほどその傾斜が大きくなっていることで表しています。
◇ 等密度面
温度が高いほど密度は小さくなるので、図では等密度面は北から南へと下がっています。
このようにして等圧面と等密度面は交わることになります。
密度は気圧と同じように高度とともに小さくなります。それで密度は、高度が高く気温が高い南側の最上層が最も小さく(赤)、高度が低く気温が低い北側の地上が最も大きく(青)なっています。
6.等密度線
模式図の上側を見てください。低緯度・中緯度・高緯度の大気を斜め上から見た箱で表しています(低緯度・中緯度・高緯度別に分割して描いてます)。
箱の蓋の部分は大気の最上層の等圧面です。低緯度と高緯度の等圧面には等密度線は描かれていません。
それに対し、中緯度の等圧面には3本の等密度線が描かれています。傾圧大気では等圧面と等密度面が交わっているので等圧面上に等密度線が引かれるのです。
図では風速分布が描かれていますが、これは等温面のところで説明します。
等密度面についてはここまでにします。次回は等圧面と等温面の関係、そして風の鉛直分布から傾圧大気について考察していきます。
