確率予報とは降水確率のように予報の結果が確率で表される予報です。
天気予報で降水確率10%と聞いて傘を持たずに出かけて雨に降られたら⋯気象予報士の評価は下がります。降水確率50%なら⋯ どうでしょう?
予報士の評価はともかく、予報自体の評価は簡単な計算式で数値化できます。
1.ブライアスコア(BS)
確率予報で用いられる式がブライアスコア(Briar Score)です。
言葉で説明しても分かりづらいでしょうから、まずは実際に計算してみます。
8月1日から5日までの降水確率の予報と実際に雨が降ったかどうかを以下のように表にして計算します。
❶ 5日間の降水確率と実際に降水があったかを表にします。
❷ %を小数値で表します。また、降水ありを1、なしを0とします。
❸ 上記により表を作成します。
❹ 予報値から実況値を引き、その値の2乗を求めます。図表では8月2日を例としています。
❺ 例と同じ仕方で5日間の表を作成します。
❻ 2乗した値の5日間の合計を求めます。
❼ 合計を日数(この場合、5)で割ります。出た値 0.138 がブライアスコアです。
ブライアスコアは数値が小さいほど精度が良いことになります。1が最悪、0が最良です。
もし、期間中の全ての日に50%の予報を出したら降水の日数にかかわらずブライアスコアは0.25になります。
以上の説明を式にするとこうなります。
$\normalsize{BS=}\large{\frac{Σ\{F(i)-A(i)\}^2}{N}}$
ただし、F(i):予報値 A(i):実況値 N:予報回数 です。
Σ はシグマと読みます。本当は Σ の記号の上にn が、下に i=1 があるのですが表記が難しいので省略してあります(すみません)。
Σ とは与えられた条件を満たす数の総和を表す記号です。
数学を忘れた人間(私)としては下の図のブライアスコアの簡略化した式で十分です。
2.コストロスモデル
2-1. コストロスモデルとは
気象庁はサイトの中でコストロスモデル(cost loss model)についてこのように説明しています。
『コストロスモデルとは、損失を防ぐために対策を施した場合にかかる費用(コスト)と、何も対策を施さなかった場合に出る損失(ロス)をあらかじめ把握しておくことで、確率値に応じて最適な対応をとることができる、というものです。』
2-2. ライブコンサートの例
ある野外ステージで10日間のライブを計画しました。
野外なので雨が心配です。2つの案が出ました。
① 1日10万円のテントをレンタルして雨天決行にする(レンタルは10日間以上で契約可)。
② テントはレンタルしない。雨天中止だと1日40万円の減収になるが、テントの費用がもったいないので、まあいいか。
気象会社の予測だと10日間の降水確率は40%とのこと。
①と②の案、どちらがお得か?下の図をみながら考えます。図の上段から説明します。
▶ コスト:テント費用(青い枠)
10万円/日 × 10日間 × 1=100万円
式の 1 はロスの方の計算に合わせたもので、あまり気にしないでください。
一応説明しますと、10日間のうち費用がかかる日数は100%(=1)ということです。回数にすると10回です。
▶ ロス:雨による減収(赤い枠)
降水確率40%(=0.4)というのは、10回予報が出たら、その内 4回は雨が降るという意味です。
予想される減収は 40万円が4日分(=4回分)なので総額160万円です。式にするとこうなります。
40万円/日 × 10日間 × 0.4=160万円
▶ どちらが得か
この場合、対策費用100万円<損失160万円 ですから対策した方が経済的となります。
ここで、両方の式に共通する10日間を消去して大小関係を整理します。
10万円<40万円 × 40%
2-3. コストロスの式
例を踏まえて整理します。
C:コスト L:ロス P:確率 とすると
$C\lt L \times P $ または
$\color{red}\Large{\frac{C}{L}}\normalsize{ \lt P}$
という不等式が成立するなら対策を取った方が得になります。
不等号が逆なら対策をしない方がお得といえます。
コストロスモデルは農業などにおいて季節予報を活用するようなケースで用いられるようです。
次回は量的予報の精度評価に移ります。