赤ちゃんからひい爺ちゃん、ひいばあちゃんまで4世代の大家族が大移動する。しかもすぐに新しい世代が生まれる・・ というのがマルチセル型雷雨です。
という訳(?)で、今回はマルチセル型雷雨が何なのかについて調べてみました。
1.立ち位置
マルチセル型雷雨は少し前の記事「雷雨の種類」に載せたイメージ図の次の黄色で囲んだ部分に当てはまります。
マルチとは多重という意味ですから幾つかのセルの集合体だと分かります。
気団性雷雨も幾つかのセルでできているのでマルチセルに含めている資料もあります。
でも、一般に言われるマルチセル型雷雨とは気団性雷雨とは違って組織化されたマルチセル型雷雨のことです。
それで、これから考えるのもその分類によるものです。
2.何者?
マルチセル型雷雨(マルチセル対流)が何なのかについて以下の説明が簡潔で分かり易いと思います。
● 複数の対流セルが組織化され、発生・消滅を繰り返して持続する。(『気象学のキホンがよ~くわかる本 第3版』)
● 多数の個々の対流セルで構成・組織化されています。(『気象予報士かんたん合格テキスト 一般知識編』)
● 多重セル対流(マルチセル対流)は、発達の段階の異なる複数の対流セルで構成される積乱雲です。(『雲の中では何が起こっているのか』 荒木健太郎著 ベレ出版)
3.特徴
さらにマルチセル型雷雨を含めた各種雷雨の特徴をこのような図表で表しました。
特徴としては・・
◎ 複数のセル
◎ 鉛直シア大
◎ 組織化
◎ 世代交代
(自己増殖)
◎ 巨大雷雨
まとめると・・
マルチセル型雷雨は複数の対流セル(積乱雲)が組織的に世代交代をしながら数時間にわたって持続する巨大雷雨の一種
と言えるでしょう。
4.鉛直シアとは
このタイプの雷雨が出来上がる重要な要素は「鉛直シアが大きい」ということです。
シアとは、2つの風の風向風速が異なっていることをいい、次のように分類できます。
◎ 水平シア... 水平方向の2地点の風の違いを比較したもの
◎ 鉛直シア... 高度が違う2地点の違いを比較したもの
◆ 風速シア... 風速の差だけを問題のするとき
◆ 風向シア... 風向だけを問題とするとき
鉛直シアについては以前の記事「温度風の考え方1」でも取り上げたので参照してください。
参考までに幾つかのテキストの説明は以下の通りです。
『シアとは、2つの風の風向風速が異なっていることを言い、水平方向の2地点の風の違いを比較したものは水平シア、鉛直方向の2地点の違いを比較したものは鉛直シアと言います。』(「気象学のキホンがよ~くわかる本」より)
鉛直シアについてはさらに
『(鉛直シア)は高度が違う2点の風ベクトルの差である。風速の差だけを問題にするときには風速シアといい、風向だけを問題とするときには風向シアという』
『鉛直シアが強いというときには、風速か風向か、あるいはその両者が高さとともに大きく変化している状況を意味する。』(「一般気象学」 東京大学出版会)
鉛直シアが大きいとなぜマルチセル型雷雨が出来上がるのかについては次回さらに探求していきます。