一瞬の閃光で終わる稲妻のように、積乱雲は短命で、その一生は30分から1時間に過ぎません。今回はそのわずかな命の流れに目を向けます。さらに雷が生じる仕組みも紹介します。
1.積乱雲の一生
上記の図にある通りですが、左の絵から簡単に説明します。
1-1 成長期(発達期) (図の左側)
● 若い積乱雲が上方へと発達していく段階で、雲の中はほとんど上昇気流です。
● 雨粒もわずかながらできますが、強い上昇気流のため地上には落下してきません。ですから雨も降りません。
1-2 成熟期(最盛期) (図の真ん中)
この時期の積乱雲の状態は前回の記事「積乱雲の内部」で詳しく解説しています。
● 雲頂が対流圏上部、さらには対流圏界面に達します。
● 雨粒や氷の粒子が出来、上昇気流に打ち勝って落下し始めます。
● この時、周囲の空気を引きずり降ろして下降気流が生じます。
● 成熟期には上昇気流と下降気流が共存しています。
● 地上では激しい雷雨となります。
1-3 衰弱期(減衰期) (図の右側)
● 次第に上昇気流が消滅してきて下降気流ばかりになります。
● 地上では弱い層状性の雨となります。
● 雲は上部に層状性の雲を残し、やがて消滅します。
以上は単一の孤立した積乱雲の一生です。少し前の記事「雷雨の種類」に載せたイメージ図の黄色で囲んだものに当てはまります。
2.雷の成因
雷が起こる原因はいくつか考えられていますが、カギとなるのが あられ です。図から順に説明します。
2-1 摩擦によって電荷が起きる説
<1> 雲の中で氷晶とあられが衝突する
<2> 摩擦によって電荷が起き、氷晶はプラスに、あられはマイナスに帯電する
<3>
● 氷晶は小さくて軽いので上昇気流に乗って雲の上部にたまっていく
● あられは大きくて重いので雲の下部にたまっていく
<4>
● 雲の上部と下部とで電位差が生じ放電が起きる(雲放電)
● 地表には雲の下部のマイナスに応じてプラスの電気が引き寄せられる
● 雲の下部と地表とで電位差が生じ放電が起きる(落雷)
2-2 着氷電荷発生機構論
これについては「気象予報士かんたん合格テキスト(技術評論社)」から引用します。
『これは過冷却水(水)が凍りつき、あられ(氷)に成長するときに電荷が生成して分離します。そして雲の上部に+の電気、雲の下部に-の電気が溜まり、電圧差が大きくなると、空気による絶縁が壊れ、放電が起きるというものです。』
今回は一つの孤立した積乱雲について考えました。特にメソスケール(中規模)の大気現象という点で言えば、関わってくるのは複数の積乱雲による雷雨です(例外はスーパーセル型雷雨)。
どのようにして複数の積乱雲が一つのまとまった雷雨を引き起こすのか、次回以降取り上げます。