水は100℃になると水蒸気に変わります。
となると台風の巨大な雲は熱帯の海が沸騰して水蒸気に変わって、それが冷えて雲になったということ?
いくら温暖化が進んでも沸騰は多分しないでしょう、という素朴な疑問を解消すべく調べてみました。
先に結論を言うと液体の水から気体の水蒸気への状態変化、つまり気化は蒸発と沸騰という2種類の現象に分けられるということです。そのことをイメージ図で表しました。簡単に説明していきます。
1.図の説明
赤と水色の大きな四角は水を入れた容器と考えてください。
左の容器の下を火(コンロやバーナー等)で暖めていくと次第に水の温度が上がり、一定の温度になると水の内部で水の一部が水蒸気に変わり始め、丸い水蒸気の塊ができてブクブク上昇していきます。これが沸騰です。
右の容器では温度に関係なく水の表面の一部の水分子が空気中に飛び出していきます。これが蒸発です。 まとめると・・
2.2種類の気化
◇ 沸騰
● 1気圧では100℃で生じ始める
● 水の内部で生じる
◇ 蒸発
● 温度に関係なく生じる
● 水の表面で生じる
気象現象に係わるのは主に蒸発の方です。
どうして沸騰しなくても水が水蒸気に変わるのか?それは次のような仕組みによります。
3.蒸発の仕組み
● 水の分子一つ一つはそれぞれ熱運動している(小刻みに動いている)
● 水の内部では周りからの圧力があるため、また分子間力により分子の動きはある程度制限されている
● 水の表面、つまり空気と接しているところでは水同士の圧力がないため、水分子の一部が勢い余って空気中に飛び出すことがある
別の表現をすると「中には、まわりの分子からこづき回されて運動が激しくなったあげく、水面から空中に飛び出してしまう水分子も(ある)」(「図解気象学入門」より)
この現象を蒸発と言う
● 勢い余ってと言っても、分子間力を断ち切って状態変化することには変わりないので、蒸発時には熱エネルギーを吸収する必要がある
● 蒸発時に吸収する熱エネルギーを蒸発熱(気化熱)と呼ぶ(潜熱の1種)
4.どっちが主体?
もう一度、沸騰と蒸発の違いを潜熱の観点から考えてみます。
水が水蒸気へと状態変化する時、潜熱の吸収が必要であることは以前の記事で取り上げました。この熱はどこから来るのでしょうか?沸騰と蒸発に分けて考えます。
◇ 沸騰
実験で分かるように沸騰の場合は水自体を温めて状態変化を起こさせようとします。水にとっては外部から無理やり熱エネルギーを加えられて強制的に分子間力を切られて気化されたような感じでしょう。
沸騰の場合は外部の熱源が主体となります。
◇ 蒸発
蒸発の場合は、言わば水分子が勝手に飛び出して行くわけなので、無理やり感はありません。勿論、海水が暖められれば水分子の運動が激しくなって その分蒸発する量は多くなるでしょう。
そうした要素はあるとしても水と空気が接していれば多かれ少なかれ蒸発は自然と生じます。
この場合は水分子が空気の熱を無理やり奪って状態変化を起こします。ですから水が蒸発する時、周囲の温度は少し下がることが理解できます。
暑い夏の日に打ち水をして空気を冷やすことがありますが、まさに蒸発熱を利用したものです。
ですから蒸発は水が主体となっていると言えますね。
沸騰と蒸発の違いが分かってほっとしました。
潜熱には蒸発熱の他にも、それぞれの状態変化に応じた呼び方があります。その点は別の機会に取り上げます。