鉛直・水平・螺旋・筋・・が冬の日本海を知る言葉たちです。
前回、前々回の記事で冬型の気圧配置でベナール型対流が生じる仕組みと、ベナール型対流によって出来る蜂の巣状の雲について考えました。
今回は冬型の気圧配置の時の衛星画像でよく見る 筋状の雲 が出来上がる仕組みを調べます。
カギとなるのは大陸からの強い北西風です。ではイメージ図から順番を追って考えてみましょう。まずは図の下半分をご覧ください。
1.鉛直方向の風の流れ
前回の記事で冬型の気圧配置においてベナール型対流が生じる理由を取り上げました。
暖かい海上の空気の層と上空の冷たい空気の層との温度差により小さな対流がたくさん作られるということです。
2.水平方向の風の流れ
西高東低の冬型の気圧配置においてはシベリア高気圧からの強い北西風が海上を吹いています。
3.らせん状の風
上記の二つの空気の流れが合体すると風は対流しながら らせん状に吹くようになります。
次に図の上半分について説明します。
4.筋状雲
風がらせん状に吹くと雲を発生させる上昇気流の位置は風の進行方向に移動して行きます。
風は吹き続け対流も発生し続けるので、上昇気流が生じる場所は風向に沿って線状に並ぶようになります。こうして風の進行方向に伸びる雲の列が出来上がります。
このらせん状の風は幾つもできるので、筋状の雲も幾本も生じます。このようにして冬の日本列島周辺には筋状の雲がきれいに並ぶようになるという仕組みです。
5.ロール状対流
らせん状の風による対流は「ロール状対流」とも呼ばれます。ロール状対流には2種類あります。
● Lモード(平行型ロール状対流)・・風向と平行して雲が並ぶ
● Tモード(直行型ロール状対流)・・風向に対して直角に雲が並ぶ
さて、筋状の雲を作る冬の季節風は他にも特徴的な大気現象を生み出すことがあります。収束雲とカルマン渦がその代表例です。
それらについてはまたの機会に取り上げることにして、次回から気象の花形である 雷雨について掘り下げていきます。
と、その前に潜熱、顕熱を考察する予定です。雷雨にも関係するので。